労働判例

 経営法曹会議に所属する気鋭の弁護士が、職場に役立つ最新労働判例を分かりやすく解説。事件の事実関係、判決のポイント、会社側が留意すべき事項を指摘し、労使トラブルへの対応や人事労務管理への応用を紹介します。

 1992年からの記事を掲載しており、ジャンルやキーワードによる検索も可能です。タイトル末尾に「★」マークがあるものは、判決文のリンクを掲載しています。

2016.12.19 【判決日:2016.01.14】
大王製紙事件(東京地判平28・1・14) 異動拒否し懲戒解雇、「内部告発の報復」と地位確認 懲戒目的の出向命令は無効 ★
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  • 懲戒・懲戒解雇
  • 懲戒権の濫用
  • 配転・出向

 不正会計を内部告発した後に降格され、その後の出向命令に従わず懲戒解雇された元課長が、報復処分で無効と訴えた。東京地裁は、告発内容は伝聞や推測など証拠に乏しく、目的も経営陣失脚が狙いで正当性を欠き、名誉毀損等による降格を有効とした一方、出向は実質懲戒する趣旨で動機や目的が不当と判断。経験や適性を踏まえず出向命令権の濫用であり解雇無効とした……[続きを読む]

2016.12.12 【判決日:2016.03.28】
日本アイ・ビー・エム事件(東京地判平28・3・28) 約25年間勤務し成績不良や能力不足の普通解雇は? 改善機会を与えず権利濫用
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  • 勤務成績不良
  • 解雇

 成績不良等を理由に普通解雇された事案で、約25年勤務し、雇用を継続できないほどの事情はないとして地位確認等を求めた。東京地裁は、業績はあくまで相対評価で低評価が続いてもただちに解雇相当といえず、過去配転もされ職種や勤務地限定もないなど職種転換や降格を検討したり、解雇の可能性を伝えたうえで業績改善の機会を与えるべきとして解雇無効とした。……[続きを読む]

2016.12.05 【判決日:2016.02.25】
阪急バス事件(大阪地判平28・2・25) 勤続満4年が正社員登用試験の条件と慰謝料求める 「欠員対策」で期待権もなし
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  • 労働契約上の権利義務
  • 損害賠償

 契約社員だった運転手3人が、正社員登用試験の受験資格として定める勤続満4年に達した直後の試験で、受験機会を与えられなかったため慰謝料を求めた。大阪地裁は、試験は正社員の欠員補充が目的で、必要人数や経営状況等を勘案し実施していたと認定。運用上は4年で必ず受験できるとは限らず、雇用契約の内容とはいえないとした。受験の期待を生じさせる言動もな……[続きを読む]

2016.11.28 【判決日:2016.05.19】
ヤマダ電機事件(前橋地裁高崎支判平28・5・19) うつ病自殺で労災認定されると安全配慮義務違反? 残業100時時間超えず関連否定
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  • 労災
  • 安全配慮義務

 月100時間を超える残業等からうつ病を発症し自殺したとして労災認定され、遺族が安全配慮義務違反の損害賠償を求めた。前橋地裁高崎支部は、直近の残業を月94時間と認定したうえで、医学的知見からは長時間労働と精神疾患発症の関連性は示されておらず、時間のみで強い負荷とはいえないと判断。その他負荷は認められず、うつ病を発症したとは認められない。……[続きを読む]

2016.11.21 【判決日:2016.02.17】
厚生年金事業振興団事件(東京高判平28・2・17) 病院経営を新機構に移行、院長不採用で整理解雇? 事業廃止からやむを得ない
ジャンル:
  • 企業解散
  • 解雇

 厚年病院の経営を委託されていた法人が契約終了に伴い院長を解雇した事案。法改正で設立された新機構が運営を引き継ぎ、職員も全員雇用されるなど、院長は整理解雇の4要件を満たさず無効と訴えた。東京高裁は、法人が存続しつつ人員削減する整理解雇とは前提が異なり、雇用契約は当然に承継されず選考による結果とした。解雇権濫用もなく、事業廃止の解雇は有効。……[続きを読む]

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