国際自動車事件(最一小判令2・3・30) 残業すると歩合給減る仕組み有効とした判断は 「通常の賃金」を判別できず ★

2020.05.28 【判決日:2020.03.30】
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 残業すると歩合給が減る賃金規則は無効だとして、タクシー運転者が割増賃金を求めた訴訟で、最高裁は、時間に応じて割増賃金を支払うとする労基法の本質を逸脱すると判示した。賃金体系における歩合給の位置付けに留意が必要としたうえで、残業が増えて歩合給がゼロ円になる場合に支払われる賃金はすべて時間外労働の対価となるが、通常の労働時間の賃金である歩合給が混在し判別できないとした。

割増払う趣旨逸脱 給与体系にも留意

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 Xらがタクシー運転者として勤務するY社では、売上高(揚高)の一定割合に相当する金額(「対象額A」という)から残業手当および交通費を控除したものを歩合給として支給していた。Xらは、当該賃金規則上の定めが無効であり、Yは控除された残業手当等に相当する賃金の支払義務を負うとして提訴した。

 一審判決(東京地判平27・1・28)は、揚高が同じである限り、時間外・休日・深夜の労働(以下「時間外労働等」)の有無や多寡にかかわらず支払われる賃金は同じになることから、このような制度は労基法37条の規制を潜脱するものであり、民法90条により無効とした。第一次控訴審判決も、一審の判断を維持したが(東京高判平27・7・16)、第一次上告審(最三小判平29・2・28)は、「売上高等の一定割合に相当する金額から労基法37条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできない」としたうえ、本件賃金規則における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か(明確区分性)等を審理すべきであるとして、本件を高裁に差し戻した。差戻審(東京高判平30・2・15)では、本件制度について、明確区分性の点でも、金額の面でも問題なく、割増賃金または歩合給の賃金未払いがあるとは認められないとして、Xらの請求を棄却し、本件はその上告審である。…

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令和2年6月1日第3259号14面 掲載

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