メトロコマース事件(最三小判令2・10・13) 約10年勤務した契約社員に退職金支払い必要か 支給目的は正規の確保定着 ★

2021.01.07 【判決日:2020.10.13】
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 約10年勤続した契約社員に退職金の支払いを命じた高裁判決の上告審。最高裁は、退職金の支給目的は正社員の確保定着であり、相違を不合理ではないとした。両者は職務の内容や配置転換の可能性が異なると認めたうえで、売店業務に従事する正社員の一部は、組織再編により別法人から雇用するなど賃金の変更や配置転換が困難だったことを「その他の事情」として考慮している。

職務や配転で違い「組織再編」も考慮

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 第一審被告は、地下鉄駅構内における新聞・飲食料品等の販売等を行う会社、第一審原告らは、契約社員B(有期契約社員で定年が65歳と定められていた)として、契約更新を繰り返しながら、駅構内の売店における販売業務に従事していたものである。平成27年1月当時、売店業務に従事する従業員のうち正社員は18人であった。内訳は、互助会において売店業務に従事していた者で、平成12年10月に営団地下鉄グループの関連会社等の再編成に伴い互助会から営業譲渡を受けて第一審被告の正社員となった者と、登用制度により契約社員Bから契約社員Aを経て正社員になった者である。

 契約社員Bは78人であったが、平成28年3月には、売店業務に従事する従業員が合計56人に減少し、このうち正社員は4人となった。売店業務に従事する正社員は、売店業務のほかに、不在の販売員に代わって業務を行う代務業務やエリアマネージャー業務を行うことや業務の変更を伴う配置転換等を命ぜられる現実の可能性があった。この点において、契約社員Bとは、職務の内容や配置の変更の範囲に相違があった。また第一審被告の雇用形態は、正社員・契約社員A・Bに区分されていたが、登用制度が設けられており、相当数の契約社員BやAがそれぞれ契約社員Aや正社員に登用されていた。第一審原告らは、正社員との待遇差について、旧労契法20条に反するとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

 原審(東京高判平31・2・10)は、基本給、資格手当・成果手当、賞与の相違は不合理でないとしたが、住宅手当、早出残業手当、退職金、報償については不合理と判断した。そこで、第一審原告らおよび第一審被告とも、上告した。

判決のポイント

 ①退職金は、…

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令和3年1月11日第3288号14面 掲載

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