公益財団法人後藤報恩会ほか事件(名古屋高判平30・9・13) 面談で注意指導、声荒げず違法性なしの一審は 職場排除示唆したパワハラ
学芸員がパワハラを受けたとして、退職後に慰謝料を求めた。館長らは年休の取得方法や時季を問題視して、面談で「非常識」「次は辞表を書いていただく」などと発言した。声を荒げず職務上の注意指導とした一審に対し、高裁は、館長らは代表理事の親族であり、地位、立場に照らし職場から排除を示唆されたと感じ得るもので、社会的相当性を逸脱する退職勧奨でパワハラと認めた。
辞表の提出に言及 上司は経営者親族
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被控訴人法人は、美術館を設営する会社である。控訴人は、本件美術館の職員として採用され、平成27年4月1日から勤務を開始したが、同年11月20日をもって退職した。被控訴人月子および被控訴人雪子は、いずれも法人の前代表理事の実子であり、人事または経理を担当しており、被控訴人丙川館長は、法人の前代表理事の実弟である。
同年10月に次の出来事があった。①控訴人が、前日が休館日であったため、葬儀参列を理由とする翌日の有休取得の連絡をメールで行ったことについて、月子は、控訴人に対し、「電話連絡してこなかったので、…無断欠勤に当たります」と発言し、それを聞いて、葬儀参列後、急遽、出勤した控訴人に対し、「信頼関係が全て崩れちゃった」「信頼関係ゼロです」「感覚が違いすぎて。ここのルールやペースと違う」「センスが合わない」などと言った。丙川館長も、控訴人に対し、「連絡の方法を努力すべきであった」と非難し、「…性格で…治らないということならば…仕事は、長続きしない」などと発言した。
② 控訴人が個人のメールアドレスから作成した催事予定表を送信したことについて、雪子は、控訴人に対し、指示された作業(催事予定表の作成)が間に合わないまま予定どおり有給休暇を取得したことを「非常識」と非難し、「センスが…信じられない」「信頼を失いました」などと言った。…
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