退職者への損害賠償請求事件(横浜地判平29・3・30) 業務引き継がず退職した元従業員に1千万円請求!? 不当訴訟で会社の違法行為

2017.11.15 【判決日:2017.03.30】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 退職時に引継ぎをしなかった元従業員に対し、会社が約1270万円の損害賠償を請求した事案。逆に元従業員は、不当な訴訟提起として300万円を請求した。横浜地裁は、損害が生じ得ないことは通常人であれば容易に知り得るにもかかわらず、年収の5年分以上を請求し、裁判制度の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠くと判断。会社に慰謝料100万円の支払いを命じた。

損害ないのは明白 慰謝料100万円に

著者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 X社は、IT関係の会社であり、Y(昭和63年生)は、平成26年4月1日、システムエンジニアとして入社した。

 Yは、研修後、客先のA社でシステム開発業務に従事していたが、転職を考えるようになり、12月21日、上司のC部長に対し、躁うつ病を理由に、1月末日付けで退職したいと話した。同日、Yは、母とともに、代表者B、C部長およびD部長と面談し、退職することを確認し、22日から出社せず、翌1月8日、12月25日付の退職届を郵送した。

 なお、X社の就業規則は、少なくとも90日前までに退職願を届け出ること、会社の承認があるまで従前の業務に服さなければならず、引継ぎの義務があり、退職まで90日ない場合は、退職日までの日数に応じて基本給を3~7割引き下げるとされていた。

 退職後、Yの転職が発覚し、X社は、Yが、虚偽の事実をねつ造して退職し、業務の引継ぎをしなかったことは不法行為に当たると主張して、Yに対し、1270万5144円の損害賠償等の支払いを求めた。Yは反訴として、X社ないしその代表者による退職妨害、不当訴訟および準備書面による人格攻撃が不法行為ないし違法な職務執行(会社法350条)に当たるとして、330万円の損害賠償等の支払いを求めた。…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

平成29年11月13日第3136号14面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。