阪急トラベルサポート事件(東京高判平24・3・7) 海外添乗員の時間算定し難いと一審はみなし制適用 旅行日程に沿って把握可能 ★
派遣添乗員が、みなし労働時間制を適用した一審判断を不服として控訴し、未払残業代を請求した。東京高裁は、海外ツアーの日程表は旅程管理を業務として指示した文書であること、実際の出発や到着時刻は添乗日報に記載を義務付けていたことから指揮監督が及んでいたと判示。日程表に照らすと日報には信用性が認められ、補充的に用いることで労働時間を把握できるとした。
指揮監督下と判断 日報で正確性担保
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告は、一審被告に登録型派遣社員として雇用された。A社に添乗員として派遣され、募集型企画旅行(海外ツアー)の添乗業務に従事していた。
海外ツアーにおいて、ツアー参加者との間の契約内容は、パンフレットと最終日程表により確定する。また添乗員には、ツアー出発前に、最終日程表のほか、ホテル、レストラン、バス、ガイドなどの手配状況や予定時間が記載されたアイテナリー(以下、これらを併せて「指示書等」という)が配布され、担当者からその内容の説明がなされるほか、A社では、添乗員に対し、携帯電話を貸与し、ツアー中は常に電源を入れておくことや、実際に遂行した業務内容についての添乗日報を作成するよう指示している。
このような状況の下、一審原告と一審被告との間で、本件添乗業務につき事業場外労働のみなし制(労基法第38条の2第1項)の適用の有無が争われた。原審(東京地判平22・7・2)はみなし制の適用を認めたため一審原告が控訴した。
判決のポイント
労基法第38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」とは、…使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価され、客観的にみて労働時間を把握することが困難である例外的な場合をいう。…
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