豊富町事件(旭川地判平25・9・17) 器物損壊罪で逮捕、退職勧奨に応じたが撤回求める 懲戒免職示唆し相当性欠く
器物損壊罪で逮捕され退職勧奨を受けた町立病院の検査技師が、口頭での退職の意思表示の撤回を求めた。旭川地裁は懲戒処分の量定基準は減給や戒告であるところ、免職を示唆して退職勧奨したことは相当性を欠くとした。病院は撤回は信義に反すると主張したが、退職願の提出を待たず手続きを進めるなど本人に帰責事由はないとして請求を認容。
量定基準を上回る 請求認めて取消し
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、普通地方公共団体であるYが設置する病院の臨床検査主任技師として勤務するXが、Y町長がXからの退職の意思表示を前提にXに対して平成24年6月8日付けでなした退職承認処分について、退職の意思表示の不存在またはその撤回を主張して本件処分の取消しを求めた事案である。
Xは、平成24年3月に職員宿舎において、他人の居室の玄関ドアに設置されたドアスコープカメラのレンズを紙やすりで擦るなどして損壊したとして、4月に器物損壊罪により逮捕され、罰金10万円の刑に処せられた。
Xは釈放された同年4月20日にB院長らと面談し、B院長は、本件器物損壊行為、速度超過で罰金を受けた件およびその他の過去の非違行為を併せると、懲戒免職もあり得ることなどを述べ、退職勧奨を行った。Xは年次有給休暇の残日数をすべて取得することとし、6月7日までの年休取得願を提出した。
Y町長は同年4月20日、Xに対し、本件器物損壊行為を理由に、5月1日から7月31日までの3カ月間給料の10分の1を減給する旨の懲戒処分をした。…
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