尾崎町農業協同組合事件(大阪地判平7・4・26) 諭旨解職処分に退職金の不支給は? 就業規則への定めが大前提

1996.01.15 【判決日:1995.04.26】
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長年の功を抹消する背信行為あれば

筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)

事案の概要

 Yは、昭和23年に設立された農業共同組合である。Yの就業規則では、①職員が「故意又は重大な過失により、組合に損害をこうむらしめたとき」、「組合の信用又は名誉を傷つける行為のあったとき」、「職員として体面を汚す行為のあったとき」は、当該職員を懲戒処分にする、②懲戒処分の種類は、譴責、減給、諭旨解雇、懲戒解雇とし、③諭旨解雇にした場合、情状によっては退職金の全部または一部を支給しないことがあると定められている。

 Xは、昭和46年10月18日から平成元年12月21日まで会計主任、同月22日から平成3年9月30日まで職員の最高位である参事として、職員全体を監督すべき地位にあった。Xの部下である金融課長Aが、平成2年9月6日、10日、25日、26日、Yに設けられていた預金口座から出金して、他の金融機関に設けられたB社、C社、D名義の各預金口座に振り込み送金する手続をしたが、Yに設けられていた預金口座には、右の出金額に見合う預金残高がなかったにもかかわらず、Xは、その事実を隠すため、右不足額に相当する架空の入金手続をするなどの経理操作を繰り返していた。その結果、Yは、合計1億3000万円以上の損害を受けた。

 そのため、Yは、平成3年10月1日、Xの行為が就業規則所定の退職金不支給の事由に当たるとして、Xを諭旨解雇したうえ、Xに対し退職金を支給しないという懲戒処分を行い、Xの請求にかかわらず退職金の支払いを拒否した。

 これに対し、Xは、Yが退職金を支給しないことは違法であり、Yの退職給与規程に基づき計算すればXの退職金は3009万余円になるとして、その支払いを求めるなどの訴訟を提起した。

判例のポイント

 1、Yが、金融機関として適正に業務を遂行して、その使命を果たし、社会的な信用を維持するためには、…

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平成8年1月15日第2088号10面 掲載

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