肥後銀行事件(熊本地判令3・7・21) 株主代表訴訟で取締役らに過労自殺の賠償請求 時間管理体制は適正に整備

2022.03.17 【判決日:2021.07.21】
  • TL
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 長時間労働により自殺した行員の遺族が、取締役らが適正な労働時間管理体制の構築を怠ったとして、株主代表訴訟を提起した。熊本地裁は、適切な労働時間管理体制は構築され、善管注意義務違反は認められないとした。自己申告を基礎とする仕組みを採用し、実態把握や改善のための調査を行っていたと認定した。上司でない取締役らが長時間労働を予見するのは困難としている。

自己申告制が基礎 実態確認など行う

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 原告はA銀行の株主兼従業員であった亡Pの妻、被告らはA銀行の取締役であった者である。平成24年10月18日、Pは自殺を図り死亡した。

 当時、A銀行は、時間外・休日出勤時間外管理システム(時間外や休日出勤を行う者が、オンライン上で休日出勤の予定や実績を申請し、所属長が承認を行うシステム。以下「時間外管理システム」)、時間外勤務・退行時間管理表(従業員が退行時刻を記載し、各部室店の役席者が当該従業員の退行時刻を確認し、時間外管理システム上の申告時間との整合性を確認するための表。以下「時間外管理表」)および最終退行点検表兼当番鍵引継簿(各部室店ごとに、日々最後に退行する従業員が施錠や消灯の確認をして捺印のうえ、担当部署等に報告する書類)により従業員の労働時間を管理していた。

 Pは、平成24年5~10月までの間の自身の時間外労働時間を過少申告し、またPの上司も、部下従業員がどれだけの時間働いていたかについて正確に把握しておらず、時間外管理システムによる部下従業員の時間外労働の申請や時間外管理表の記載が実際の労働時間を反映するものであるかの確認をせず、労働時間の管理をしていなかった。

 原告らPの遺族は、Pの自殺は長時間労働によるものであるとして、A銀行に対し安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求訴訟を提起したところ、裁判所は、原告らの主張を認め、A銀行に対し安全配慮義務違反に基づく損害賠償の支払いを命じた。

 その後、原告は、A銀行が原告らに対し損害賠償金等を支払い、また銀行としての信用が損なわれ信用毀損による損害を被ったのは、A銀行の取締役であった被告らが、従業員の始業終業時刻をPCログ等により把握するようにしておらず、労働時間管理体制の構築に係る善管注意義務を懈怠したためであると主張して、代表訴訟を提起した。

判決のポイント

① 会社は従業員の健康等に対する安全配慮義務を遵守し、その労務管理において…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

令和4年3月21日第3345号14面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。