富士重工業事件(東京地判平10・3・17) 海外研修者が帰国後退社、費用の返済は? 労基法16条に違反し、ダメ

1998.07.13 【判決日:1998.03.17】
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研修か業務か派遣の実質で判断に差

筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)

事案の概要

 原告会社の社員であった被告Aは、在籍中、原告会社の海外企業研修派遣制度によって、当時原告会社が49%の株式を所有していたアメリカのS社本社財務部に派遣された。右派遣制度には海外企業研修員派遣規則があり同12条には「研修員が研修期間中、または研修終了後5年以内に退職する場合、海外企業研修員取扱規則3条、及び本派遣規則第9条に基づいて会社が負担した費用の全額または一部を返済させることがある」と規定されている。被告Aは、原告会社から指示されたS社の経営内容を調査して報告したり、S社の従業員と同じように働いて実務を経験しつつ販売管理、ディーラー管理、アフターサービス、技術開発、生産管理、資材管理等の研修をしたり、ときには米国内の原告会社の業務に従事したこともあった。

 被告Aは、2年間の研修終了後帰国し6カ月後に退職を原告会社に申し出た。原告会社は、右規則に基づき被告Aと派遣費用返済を分割でなす合意をなし、被告Bは、被告Aの右債務について連帯保証した。被告らが、一部しか支払わなかったので、原告会社は、派遣費用の未払い分(被告A及びその妻の赴任及び帰任時の各航空券代や荷造運送費、トランクルーム賃借料等)の請求をなしたのに対し、被告らは右返済合意は無効であると主張し、被告Aが原告会社に対し、既払い分を不当利得として返還請求するとともに、本訴の提起は違法であるとして慰謝料等を請求した事案である。

判決のポイント

 被告Aは、自分の意思で海外研修員に応募したとはいえ、本件研修は、原告会社の関連企業において業務に従事することにより、原告の業務遂行に役立つ語学力や海外での業務遂行能力を向上させると言うものであって、その実態は…

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平成10年7月13日第2208号12面 掲載

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