井関松山製造所事件(高松高判令元・7・8) 無期転換後も手当なし、正社員と比べ不合理か 労働条件変わらず格差違法

2020.01.30 【判決日:2019.07.08】
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 家族手当などを支給しないのは不合理とした判決後、有期契約から無期転換した従業員が地位確認等を求めた。高裁も損害賠償責任が生じ得るにとどまると判断したほか、無期転換者の就業規則の制定前に労組と交渉した証拠はないなど、規則制定のみで賠償の支払い義務を負わないとはいえないとした。各手当がないのは違法だが、賞与に代えて「寸志」とする経営判断の合理性は認めた。

交渉せず就規制定 損賠賠償を命じる

筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)

事案の概要

 Y社は、農業用機械器具の製造および販売等を事業目的とする株式会社である。

 X1~X3(以下「Xら」)は、Y社の製造ライン業務の一端を担っている。

 Xらは、有期契約労働者として入社し、有期労働契約の更新を重ねた後、Xから無期労働契約の締結の申込みにより、平成30年9月1日より無期労働契約に転換した。Y社には、無期契約労働者の就業規則とは別に、無期転換社員の就業規則(以下「無期転換就業規則」)が存する。

 本件において争点となった賞与、家族手当、住宅手当、精勤手当(以下、総称する場合は「本件手当等」)に限って、Y社における賃金内容を説明するに、以下のとおりである。

 ①賞与の支給対象者、支給対象期間、算定基準等は、Y社所定の「賞与支給規程」、「賞与支給基準」で決定される。Y社の業績に応じて決定される無期契約労働者の平均賞与額は、平成25年夏・冬季、平成26年夏・冬季で、約35万円~38万円であった。

 ②家族手当は、無期契約労働者に対しては、扶養家族の続柄に応じて支給される。

 ③住宅手当は、無期契約労働者に対しては、扶養者の有無および住宅の別に応じて支給される。

 ④精勤手当は、無期契約労働者のうち月給日給者で、かつ、当該月皆勤者に限り支給される。

 本件各手当は、有期契約労働者には支給されない。賞与は、有期契約労働者本人の成績、Y社の経営状態および経済情勢を勘案し、有期契約労働者にも寸志を支給することがあり、Xらには、毎年7月および12月の2回にそれぞれ一律5万円(概ね、無期契約労働者の賞与平均額の7分の1)が支給されている。

 Xらは、無期契約労働者との間で、賞与、本件各手当に関して、労契法20条に違反する不合理な相違が存在すると主張して、①Xらに無期契約労働者に関する就業規則等が適用される労働契約上の地位の確認、②本件手当等についての差額等の支払いを求めた。

 一審判決(松山地判平30・4・24、本紙3195号)は、…

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令和2年2月3日第3243号14面 掲載
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