さいたま労基署長(日研化学)事件(東京高判平19・10・11) うつ病自殺に労災不支給、一審は業務上と認定 趣味の株取引失敗が主要因
2008.11.10
【判決日:2007.10.11】
うつ病で自殺した医薬品会社の品質管理責任者の妻が、過労の蓄積によるとして労災申請したが不支給となり、労保審査官も不支給としたため決定の取消しを求めた。一審はトラブル対応等の状況を評価し、業務起因性を認めたため行政側が控訴。東京高裁は、紛争処理は3~4日に1度の実態等から強度の心理的負荷を伴わないとし、逆に趣味の株取引で被った損害が発症要因と判示した。
トラブル処理僅か 心理的負荷伴わず
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Xの元夫Aは、昭和43年に医薬品会社のB社に入社し、平成8年10月に品質管理責任者に選任された。平成8~9年当時、Aは、包材検査、製品検査、参考品管理、原材料規格書および製品規格書の作成、原料・製品および工程の各管理のほか、品質管理責任者としての業務(検査結果などの判定業務、各種会議の出席など)に従事していた。
前述の業務のうち、原材料規格書・製品規格書の作成業務について、Aは平成9年夏頃から11月にかけて自宅でも業務を行うと共に、Xに対して当該作業を負担に感じる旨の発言をしていた。また、原料・製品および工程の管理(トラブル発生時の対応業務)については、適切に対応ができず、その際、部下からかなり強い口調で批判的なことを言われたこともあった。
Aの1カ月当たり平均時間外労働時間は、概ね10~20時間であった。…
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平成20年11月10日第2704号14面 掲載