学校法人桐蔭学園事件(横浜地判令6・12・26) 約25年間賞与支給月数変わらず引下げは有効か 労使慣行成立でも変更必要
約25年間同じだった賞与の支給月数を引き下げられたのは労使慣行に反するとして、教員らが未払賃金等を請求した。横浜地裁は、賞与の算出方法を示した通達文書の内容等から労使慣行の成立を認めたが、減額は有効とした。経営改善の必要性を文科省から指摘されていたほか、減額割合は年収の5~6%に留まり、法人は団交で理解を得る努力を重ねたとしている。
約6%減に留まる 団体交渉を重ねた
弁護士:岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Yは学校法人であり、X1組合は、Yの中学校、高校および中等教育学校の教職員で組織された労働組合である。X2らはYの専任教員、X3は非常勤講師であり、いずれもX1組合員である。
X2らに適用される就業規則等では、専任教員には入試手当を含む特殊勤務手当が支給されることになっていたが、その支給要件・支給額は定められていなかった。また賞与につき、「6月及び12月に支給する」、「本給、調整給、扶養手当、管理職手当、主任手当の合計額を算定基礎給として別に定める支給率を乗じて得た額を支給額とする」等の規定があった。X3に適用される就業規則には、「非常勤講師の勤務実績等を勘案し、必要を認めた場合は学園の基準により年2回の賞与を支給することがある」との規定が置かれていた。
Yは平成6年11月に通達文書を発し、専任教員の賞与の算出方法を変更した(以下「本件賞与算出方法」)。また、翌年1月の団体交渉にて、X1組合に対し、賞与の年齢別加算の具体的金額を明らかにし、入試手当(監督)を5万8000円から11万6000円に増額する旨回答した。Yは、同6年から、全専任教員に対し、一律に本件賞与算出方法に基づく賞与および入試手当を支給し、また、遅くとも同10年から、全非常勤講師に対し、勤続年数に応じた一律の乗率に基づく賞与を支給した。
令和元年11月、Yは文部科学省より、経営指導強化指標(略)に該当するとして、集中経営指導法人に指定された。同年10月および翌年3月、Yは全教職員に対し、資金収支計算等に関するシミュレーション資料等をメール送信した(各書面を合わせて以下、「本件書面」)。その後、Yは本件書面に基づき、同年度以降、高校以下の専任教職員の賞与の支給乗率を5.45カ月分から5.0カ月分に引き下げ、非常勤講師等の賞与を8.26%削減し、入試手当を廃止する等の措置を実施した(以下、これらを総称して「本件措置」)。
X2らとX3は、それぞれ減額相当額等の支払いを求め、Yを提訴した。
判決のポイント
労使間で慣行として行われている取扱いは、①同種の行為又は事実が…長期間反復継続して行われており、…
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