滋賀県社会福祉協議会(差戻審)事件(大阪高判令7・1・23) 技術者の同意得ないまま配転命じて不法行為? 職種限定に反し過失認める
職種限定の合意があった技術職に対し、同意を得ずに命じた配置転換を違法とした最高裁が、不法行為に当たるかの審理のため差し戻した事案。大阪高裁は、職種限定の合意を容易に認識できたとして、会社の過失を認め慰謝料の支払いを命じた。これまでの経緯から会社は他の職種に就かせることは想定しておらず、労働者が技術職を続けたいと発言していたことを考慮した。
業務変更想定せず 本人の発言も考慮
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成13年3月、訴外Z財団法人に雇用され、その後、同法人の権利義務を承継した社会福祉法人Y(以下「Y」)に雇用されて長年、福祉用具の改造および製作並びに技術の開発に係る技術職として従事していた。
XとYの間には職種および業務内容を前記内容に限定する旨の合意があったが、Yは、当該業務の廃止を決定し、Xの同意を得ることなく、Xに対して総務課施設管理担当への配置転換を命じた(以下「本件配転命令」)。
Xは、本件配転命令は職種等の限定合意に反すると主張して、債務不履行または不法行為による損害賠償(慰謝料)を請求した。その他、争点は多岐にわたるが、本稿では、本件配転命令に絞って検討する。
京都地裁(令4・4・27)、大阪高裁(令4・11・24)は職務限定特約があっても、解雇回避のための配転命令については、権利濫用に当たらないとして損害賠償請求を棄却したが、最高裁(令6・4・26)は、職種限定がある場合には、使用者は、配置転換を命ずる権限を有しないとして、原審判決を破棄し、不法行為を構成すると認めるに足りる事情の有無等につき審理を尽くさせるため本件を高裁に差し戻した。
判決のポイント
1 不法行為の成否
(1)配転命令の違法性
XとYとの間には、職種及び業務内容を…限定する…合意があったというのであるから、Yは、Xに対し、その同意を得ることなく総務課施設管理担当への配置転換を命ずる権限を…有していなかった…。にもかかわらず、…
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