中日新聞社(錬成費不支給)事件(東京高判令6・3・13) 60年以上も続いた錬成費の支給取止めは有効か 労使慣行成立せず請求棄却

2025.05.15 【判決日:2024.03.13】
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 60年以上支払われていた錬成費を不支給とされた労働者が、労使慣行に反するとして支払いを求めた事案の控訴審。東京高裁は、支給は労使双方の規範意識で支えられていたとはいえないとして請求を退けた。過去、金額のほか支給方法や対象者を変更する際、労使交渉はなされず会社が決定していた経緯や、労使間で任意的恩恵的な給付と位置付けられていたことも考慮した。

“規範意識”を欠く 会社一方的に決定

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 Y社では、昭和30年代から60年以上にわたり毎年、従業員に「錬成費」を支給していたが、就業規則、賃金規程、労働協約、労働契約のいずれにも「錬成費」の記載はなかった。

 錬成費の支給時期・方法、金額、対象者の範囲は変動があったものの、昭和50年には1年に1回、3月に3000円を支給するようになり、平成21年までは現金・手渡しであったが、同22年には3月の給与支給時に合わせて振り込まれるようになり、課税所得として扱われることになった。

 Yは、令和2年1月、2つある労働組合それぞれに対し、錬成費不支給を告知し、同年から支給しなくなったため、Y社の従業員であるXは、錬成費の支給は労使慣行または黙示の合意として労働契約の内容となっていると主張して、労働契約に基づき、錬成費およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めて提訴した。

 原審(東京地判令5・8・28)が、労使慣行も黙示の合意も認められないとしてXの請求をいずれも棄却したため、これを不服として、Xが控訴した。控訴棄却後、上告棄却・不受理で確定している(最三小決令6・9・18)。

判決のポイント

1 労使慣行の成立要件

 民法92条により…労使慣行が成立していると認められるためには、…

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令和7年5月19日第3497号14面 掲載
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