東京海上火災保険事件(東京地判平7・11・30) 定期健康診断と使用者の安全配慮義務 医療機関への委嘱でOK

1996.06.17 【判決日:1995.11.30】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

肺がんによる死亡 使用者に違反なし

筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)

事案の概要

 被告は、損害保険事業を営むことを目的とする株式会社で、昭和61年まで毎年、本店診療所において、常駐の嘱託医等により全社員の定期健康診断を実施、昭和62年からはこれを外部の医療法人に委嘱した。

 原告らの妹Aは、昭和51年入社以来、毎年定期健康診断を受診していたが、胸部レントゲン写真ではいずれも「異常なし」とされた。Aは、昭和62年6月17日の医療法人におげる定期健康診断の際、胸痛及び息苦しさを訴え、同年7月14日に糖尿病精査のため糖負荷検査を受けた。その際、Aが医師に咳及び痰の一部に血の混じることを訴えたため、医師は胸部レントゲン撮影を行った。

 Aは、同年8月4日、病院で受診し、同月13日入院したが、同年11月20日、肺癌による呼眠不全により死亡した。

 Aの相続人である原告らは、定期健康診断を担当した医師らにレントゲン写真で異常陰影を見落とした過失があり、異常に気づいておれば救命も延命も可能であったとし、被告は安全配慮義務の履行の一環として定期健康診断を実施するところ、定期健康診断にあたっては、疾病の早期発見のために必要にして十分な健康診断制度を作り、かつそれを運用すべき義務があるにもかかわらず、Aの異常陰影を見落とす結果を招いたことは安全配慮義務違反があると主張して、被告らに対し損害賠償を請求した。

 裁判所は、医師に過失が認められないことや、医師に過失があったとしても過失行為とAの死亡との因果関係が認められないこと、被告に安全配慮義務違反はないことなどを理由に、原告らの請求を棄却した。

判決のポイント

 いわゆる安全配慮義務は、…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

ジャンル:
平成8年6月17日第2109号10面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。