インフォミックス社事件(東京地決平9・10・31) 引抜きに応じ勤務先をやめた者への内定取消 誠実な対応に欠け無効

1998.03.30 【判決日:1997.10.31】
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合理的理由あるも著しい不利益認む

筆者:弁護士 安西 愈

事案の概要

 IBMの開発部に勤務していたA氏は、元同僚の本件B社のT氏からマネージャーの話をもちかけられ、B社役員、人事部長らと4回にわたり面接、職能資格等級58等級、マネージャー、基本給60万円等を明記した採用条件提示書及び入社承諾書の送付を受けた。A氏は平成9年3月31日、IBMに対して同年4月30日退職予定の退職届を提出した。

 その後、4月15日B社より「当初の採用条件でAさんを採用する予定が、当社の都合でできなくなるかもしれません。たとえ5月に入社していただいても、当初の想定業務を行ってもらえなくなることになってはAさんに対して申し訳ない。もしAさんの方が入社を辞退したいということであれば、それ相応の償いをしたいと考えています」との連絡を受け、その後B社より既に大阪営業所を閉鎖し、東京でも組織、人員、経費の見直しが進められ、A氏以外に3名の者が入社辞退の勧めを受けている旨の説明をしたうえで、B社は①基本給の3カ月分の補償、②入社して試用期間である3カ月経過後に辞める、③入社するが、マネージャーではなく、マネージャー待遇でシステムエンジニア(いわゆるSE)として働くとの三つの案を提示し、「仕事内容が変わるかもしれないが、Aさんには是非働いてもらいたい」と述べた。これに対し、A氏は「話が違う。ちゃんとマネージャーとして雇ってくれ。3カ月だけ再就職のために籍を置いておくなんて条件はとても飲めない」と抗議し、入社辞退の場合には基本給の24カ月分の補償を要求し、右要求が受け入れられない場合には弁護士を立てること、入社するのであれば試用期間を放棄することを申し入れ、IBMも辞めたので一生懸命全力を尽くしてB社で働きたい旨申し入れたが、最終的にB社は本件採用内定を取り消す旨の意思表示をした。

決定のポイント

 まず、本件採用内定の法的性格については、…

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平成10年3月30日第2194号12面 掲載

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