甲学園事件(東京地判平29・4・21) 新学部の教員名簿に登載も採用されず賠償請求 内定前でも採用の期待侵害
新設学部の教員予定者とされていた他大学の准教授ら2人が、学部認可後に採用されず不当な内定取消しと訴えた。学部認可に必要な教員名簿には氏名が登載されていた。東京地裁は、労働契約締結の期待は法的保護に値する程度に高まっていたと判断。採用内定とはいえないが、文科省の教員審査後も面接など採用手続きを執らず不誠実とした。55万円の慰謝料を認容。
面接行わず不誠実 慰謝料55万円命ず
著者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告の看護学部設置認可にかかる教員名簿に登載されたにもかかわらず、教員として採用されなかった原告A1、同A2が、被告に対し、損害賠償金の支払いを求めた事案である。
原告らは、原告らを採用しなかったことは、(1)採用内定の取消しであって、債務不履行(誠実義務違反、民法415条)または不法行為(民法709条)に当たる、若しくは(2)原告らの期待権を侵害する不法行為(民法709条)に当たると主張した。
判決のポイント
1、被告において採用は、原則として、所定の選考手続を経て理事長が決定するものであること、就職希望者は、書類選考を経て、筆記試験、面接試験、技能・適性検査その他必要な試験を受けること、これらの試験の合格者は、誓約書等所定の書類を提出し、被告は採用決定通知を送付すること、同通知を受け取った者は、被告の指定する期日に勤務場所に出頭し、所定の手続をし、これにより労働契約が成立することが認められる。これによれば、原告A1は、平成25年6月21日の時点で上記の就業規則で定められた採用手続を経ていないといえるが、上記採用手続を執らないことがもっともな事情を見いだすことはできない。
原告らの教員就任承諾書の作成をもって内定が成立したとの主張は採用できない。そして被告は、平成26年12月18日に看護学部設置の認可を受けた後に就業規則にしたがい教員採用手続を始めたが、…
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