A特許事務所事件(大阪地決平17・10・27) 2年間の競業先への就職禁止を退職者に求める 職業選択の自由制約し無効
2006.06.05
【判決日:2005.10.27】
特許事務所で翻訳業務や秘書業務に従事し退職した職員の再就職先について、事務所経営者が入所時の誓約書を楯に競合関係の特許事務所などへの就職行為を2年間禁止するよう求めた事案で、大阪地裁は補助業務に従事していたに過ぎず、従前の経歴を生かした再就職を断念させ、職業選択の自由を不当に制約し公序良俗に反し無効と判断し却下した。
何らの代償もない 補助業務にすぎず
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、特許事務所(本件事務所)を経営する弁理士である債権者Aが、就職禁止約定に基づき、Aを退職した債務者Bら12人に対し、Aの依頼者にとって競合関係を構成する特許事務所等において退職後2年間就職行為の禁止を仮処分によって求めた事案である。
Bらは、1人を除き事務所に入所した日付でA宛誓約書(本件誓約書)に署名押印した(内容についての説明は受けなかった)。本件誓約書には、退職後の守秘義務として、事務所の顧客に関する情報を外部に持ち出さないこと、顧客から委任を受けた案件につき、これに敵対する形で退職後に別の顧客の代理をしないこと、事務所を退職後、2年間は、事務所の顧客にとって競合関係を構成する特許事務所・法律事務所(特許事務所等)への就職を禁止すること(本件就職禁止条項)が含まれていたが、地域の限定はなかった。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
ジャンル:
平成18年6月5日第2587号14面 掲載