新大阪貿易事件(平3・10・15大阪地判) “競業避止”特約の条件は

1992.02.24 【判決日:1991.10.15】
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「明確な合意」など5要件

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

判決の概要

 会社(新大阪貿易株式会社)は、労働者A(営業部長)との労働契約で、「会社の社員である限り、かつ、社員の地位を喪失後、3年間に限り、自ら直接または間接的に、若しくは他の如何なる個人または会社を通じて、会社あるいはその親会社(株式会社タカオカ)のいずれかが取り扱う商品の販売をしない」との競業避止義務負担特約をしていたところ、Aは平成元年12月28日に会社を退職した後、新会社を設立して同一もしくは会社の得意先台帳による顧客情報を利用して同一もしくは同種の商品の販売などの営業を始めた。

 そのため、会社は月商が10分の1程度に落ち込んだ。そこで、会社はAの競業避止行為の差し止め仮処分を申請し、平成2年9月11日、Aに対して、平成5年2月末日まで会社が取り扱っている別紙目録記載の商品と同種の商品を、Aが販売しまた新会社その他の第三者に販売させることをいずれも禁止する旨の仮処分決定がなされた。

 本判決の仮処分決定に対する異議事件につき、本判決はおよそ次のように判示して、右仮処分を認可したものである。

 「会社が、防衛すべきものとしている企業利益は、会社の得意先ないしそれに関する顧客情報であって特許権ないしこれに類する権利やノウハウなどほどには特別な秘密保持を必要としないものであるが、それを従業員がその利益のために自由に利用すれば、場合によっては企業の存立にも関わりかねないこととなる点において、特許権などの権利利益と異なることのない重要な企業利益であり、企業が合理的な範囲で従業員の在職中及び退職後のその自由な利用を制約することは合理性を欠くものではない。

 本件のようにAが自己の退職後に会社において顧客情報を利用することはほとんどできないようにしておいて会社の得意先を奪うといった競業の行為を、その行為の会社に対する影響がもっとも大きい退職直後の3年間に期間を限定して、特約によって禁止することは不合理ではなく、Aという職業、営業の選択の自由や生存権を侵すものではなく、公正な取引を害するものでもない。その他、疎明を総合しても特約を憲法、法律に照らして無効とするのを相当とする事情は認められないから、会社は特約に基づいてAの競業行為の差し止めを求める権利を有するといえる」。

判決のポイント

 Aが会社を退職した後の3年間について会社及びその親会社の取り扱う商品を販売しない旨を内容とする競業避止義務負担特約は、職業選択の自由、生存権を保障した憲法の規定に反しないか、…

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平成4年2月24日第1902号10面 掲載

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