大阪運輸振興事件(大阪地判平20・10・31) 乗車拒否し停職処分、反省覆す言動から雇止め 服務規律遵守の信頼を喪失
嘱託のバス運転手が、乗車拒否を理由とする停職処分後に雇止めされたため、解雇権濫用により無効として地位確認等を求めた。大阪地裁は、処分後に始末書撤回を迫る等の行動から、服務規律遵守に関する信頼を喪失したことが雇止めの理由であり、更新判断基準である勤務成績の内容の1つとして考慮され得るとしたうえ、雇止めは解雇権の濫用には当たらないとした。
更新判断の1つに 解雇権濫用でない
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(大阪運輸振興株式会社)は、大阪市交通局の委託を受けて市バスの運行や営業所を運営する株式会社で、労働者甲は、平成16年3月に1年間の嘱託社員契約を締結し、バスの運転業務に従事し、契約は同17年、18年の4月に更新された。また、甲は同18年2月に大阪市バス大阪運輸振興労働組合を結成し、議長として組合活動を行った。
甲は、同18年9月、身体障害者とその介護人の乗車に対し、「遊びの乗車」、「無料乗車証の不正利用」などと指摘し、結果として両人が乗車を取り止めるトラブルが発生した。障害者の母親が大阪市交通局に苦情を申し立てたことから事件が表面化し、会社は甲から事情を聴取。「運送の引受けを拒絶してはならない」と定めた道路運送法など法令違反に相当し、事業停止など会社の存続にも影響しかねないことから、甲に始末書の提出と停職30日を命じた。
甲は同命令に異議を示さなかったが、停職期間終了後に、前記労働組合から始末書や処分撤回を議題とする団交申入れがあり、団交席上での会社の交渉拒否に対し、府労委に救済を申し立てるなど紛争に発展した。…
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