甲社事件(東京地判平27・1・14) 不衛生な弁当屋と保健所へ通報、パートを懲戒解雇 正当な内部告発であり無効
「不衛生な弁当屋」と保健所に通報したパートを、虚偽を理由に懲戒解雇したところ、地位確認を求められた。東京地裁は正当な内部告発かは通報の根幹部分の真実(相当)性、目的の公益性などを考慮するとしたうえで、立入検査で15項項目の衛生指導がなされ虚偽といえるかは疑問であり、目的は食中毒防止であることなどから、解雇に客観的合理的理由はないとした。
食中毒の防止目的 立入検査で指導が
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、高齢者等に弁当を配達する配食サービス業者であり、原告は、厨房スタッフとして被告の世田谷狛江店で勤務していたパートタイマーである。
平成24年12月12日、原告は、世田谷保健所に電話をし、担当職員のCに対し、被告について、不衛生な状況が見られる、食中毒の危険性があるとして、具体的には、味噌汁など汁物用のポットが細い管式のもので管の中が洗えないためカビ臭がしている、弁当箱に除菌剤をスプレーし、料理を盛り付けてまたスプレーをしてから蓋をしている、換気扇から虫が侵入してくる等と告げた。
これをもとに、Cは、12月17日、本件店舗に立入検査を行い、原告にその結果を報告したが、原告からもう少し立ち入って検査して欲しいという要望を受けたため、12月25日、D係長と他2人の合計4人で本件店舗に立入検査をすることにした。12月25日の立入検査では、D係長を中心にして原告から指摘のあった事項について具体的に話を聞いたり、品物の検査や拭取り検査などを行ったが、拭取り検査の結果は特に問題はなく、本件通報事項についても事実であることの確認はできなかった。同日の世田谷保健所の立入検査が終わった後、被告は、虚偽の通報を世田谷保健所に行ったこと等を理由として原告を懲戒解雇した。
本件解雇後の平成25年1月10日、Cは、本件通報事項については事実であることの確認はできなかったものの、上記の調査の結果を踏まえて、被告に対し、…
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