国鉄清算事業団建物明渡請求事件(千葉地判平6・3・28) 従業員身分喪失した者の社宅利用 明渡し要求は当然の行為

1995.06.19 【判決日:1994.03.28】
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貸与と雇用関係とは密接に関連

筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)

事案の概要

 元国鉄の職員であったAは、国鉄公舎基準規程により本件宿舎に入居していた。Aは、国鉄改革の際に新会社に採用されなかったため国鉄清算事業団の職員となり、再就職対象者に指定されたが再就職しないまま辞職願を提出し、事業団を退職した。一方、本件宿舎の所有権は、国鉄からJR東日本に承継され、事業団とJR東日本は、事業団の職員が改革実施日に宿舎を利用している場合は、向こう5年間に限り宿舎の利用を認めるという協定を締結した。また、事業団の宿舎等取扱基準規程には、事業団の職員が職員でなくなった場合には、60日以内に宿舎の明渡しをしなければならないと定められていた。Aは、事業団に辞職願を提出し、受理されたが、60日経過後も本件宿舎を明け渡さなかった。そこで事業団がAに対し、宿舎の明渡し等を求めたのが本件である。

判決のポイント

 事業団と国鉄は同一法人格であるから、国鉄から事業団へ配属された職員は、原則として国鉄における身分関係を有したまま事業団職員へ移行したことになる。したがって、事業団職員は、事業団法によって規律され、公法的色彩を残したいわば公務員に準ずる身分を有するに至ったものということができる。

 そして事業団職員の宿舎利用関係については、公舎基準規程に替わって宿舎取扱基準規程が規律することになったが、その規律も多数の事業団職員の宿舎の利用関係を円滑かつ一律に規律していく必要から認められたものであり、使用料や居住条件等について一々個々の職員の同意を必要とするものではなかった。このように公舎基準規程から宿舎等取扱基準規程へと名称が変わり、事業団の設立目的に応じた変容を受けたとしても両規程の実質は同じであり、利用関係の法的性質も同じであったと解される。したがって、原告における宿舎の利用関係も、民法・借家法等が適用される純粋の契約関係ではなく、宿舎等取扱基準規程によって規律される雇用関係と密接に関連した特殊な法律関係であるということができる。……宿舎等取扱基準規程は、事業団の職員が職員でなくなった場合には、60日以内に宿舎の明渡しをしなければならない旨を定めているが、右規程は、前述した雇用関係と密接に関連した本件宿舎利用関係の性格に照らし当然の規程であると解される。

応用と見直し

 本件は、雇用契約の終了と宿舎(社宅)の使用継続の可否が争われた事件である。社宅に関する紛争は、本件のように…

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平成7年6月19日第2061号10面 掲載

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