長谷工コーポレーション事件(東京地判平9・5・26) 留学後2年強で退社、学費分の返還請求は? 労基法16条に抵触しない

1997.09.15 【判決日:1997.05.26】
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業務命令ではなく純然たる貸借契約

筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)

事案の概要

 本件は、社内留学制度を利用した従業員Xが留学後、2年半足らずで退社したため、会社が留学費用のうち学費分の返還を求めた事案である。Xは、社内留学制度により平成3年6月から平成5年5月まで、米国の大学院に留学し経営学博士の学位を取得して同年6月に帰国したが、その後平成7年10月31日に退社した。会社は、Xの留学費用として合計約850万円を支出しており、また、Xは留学に先立って次の内容の誓約書を会社に差し入れていた。

 ① 留学先へ渡航後は、学業に精励し、必ずや学位を取得し卒業すること。

 ② 卒業後は、直ちに帰国し、会社の命じるところの業務に精励するとともにその業績目標達成に邁進すること。また、会社の留学生の名に恥じないような見識を備えるべく日々努力すること。

 ③ 帰国後、一定期間を経ず特別な理由なく会社を退職することとなった場合、会社が海外大学院留学に際し支払った一切の費用を返却すること。

 そこで、会社は退社したXに対し、支出した留学費用のうち学費分約470万円の返還を求めて提訴し、裁判所は会社の返還請求を認めた。

判決のポイント

 1 本件留学制度は、社員の自由意思によるもので業務命令に基づくものではなく、留学先の選択も本人の自由意思に任せられており、留学経験や留学先大学院での学位取得は、留学社員の担当業務に直接役立つというわけではない一方、留学社員にとっては会社で勤務を継続するか否かにかかわらず、有益な経験、資格となる。…

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平成9年9月15日第2169号10面 掲載

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