ネオユニット事件(札幌高判令3・4・28) 事業所閉鎖し解雇、やむを得ないとした一審は 回避努力を尽くさず無効に

2022.04.28 【判決日:2021.04.28】
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 障害者の就労施設を閉鎖し事業を廃止して、スタッフらを全員解雇した事案の控訴審。閉鎖はやむを得ず解雇有効とした一審に対し、札幌高裁は、整理解雇の法理を当てはめて回避努力が尽くされておらず無効と判断。再就職の都合を考慮して閉鎖時期を決定したり、合意退職に応じてもらうよう調整すべきだったとしている。人選の合理性も認められるが、対応を一部不十分とした。

再就職の配慮欠く 合意退職も選択肢

筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)

事案の概要

 ア 本件は、指定就労継続支援A型(雇用型)の事業所(なお、非雇用型の事業所はB型といわれる)として運営していた就労継続支援施設(以下「本件施設」)が閉鎖され、スタッフおよび利用者の全員が解雇されたところ(以下「本件解雇」)、スタッフおよび利用者の一部(以下「Xら」)が、本件解雇の有効性を争った事案である(本件は他にも論点があるが、紙幅の関係で省略する)。

 イ Y社は、平成26年5月設立後、障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス事業者の指定を受け、平成27年2月からは本件施設を就労継続支援A型(雇用型)の事業所として運営していた。助成金等も含めたY社の経常損益は、設立から事業所の閉鎖(平成29年4月末)までの期間において3期連続赤字であり、各期末はいずれも債務超過に陥っていた。さらに、平成28年10月には社会保険料滞納によるY社名義の預金の差押えを受けるなどしていた。

 ウ 平成29年3月末に生活支援員1人の退職により訓練等給付金の減額(月21万円)が見込まれたこと、同年4月1日施行の基準省令の改正により、原則として、自立支援給付をもって利用者の賃金の支払いに要する額に充てることができなくなったこと等から、Y社は本件施設を閉鎖することとした。同年3月30日以降、スタッフおよび利用者全員に対して、同月31日付の解雇予告通知書を交付するなどして、同年4月30日付の本件施設の閉鎖の予告とともに同日付で本件解雇を行う旨の意思表示をした。Y社は、本件解雇予告に先立って、スタッフ、利用者に対し、本件施設の閉鎖等に係る事情の説明を行わず、合意退職の希望の確認もしていない。解雇日までにY社が設けた説明の機会は、同年3月30日の解雇予告通知書を交付した際と同年4月18日の説明会の2回のみであり、しかも、その説明会は、スタッフと利用者の全員を対象として実施された1時間程度のものに過ぎず、利用者の抱える障害の特性に配慮したうえで個別の面談の機会が設けられるようなこともなかった。

 エ 本件施設のスタッフおよび利用者のうち10人が、本件解雇の無効等を主張しY社を提訴した。一審(札幌地判令元・10・3)は、本件解雇を有効とした(ただし、利用者についてのみ慰謝料各5万円および弁護士費用各5000円および遅延損害金の限度で認容)が、これを不服として、Xら6人が控訴したのが本件である(残り4人については一審判決が確定)。…

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令和4年5月2日第3351号14面 掲載

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