みずほ証券事件(東京地判令3・2・10) 海外留学終了後に退職、費用3000万円返還求める 5年勤務で免除の契約有効

2021.10.21 【判決日:2021.02.10】
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 海外留学制度を利用して帰国後、約半年で退職した元従業員に対し、会社が誓約書に基づき約3000万円の返還を求めた。東京地裁は、留学は業務と直接関連せず役立つ性質のものでもないと判断。勤務以外でも通用する有益な経験・資格等であり個人の利益になる部分が相当大きいとした。返還が免除される5年間の勤続も不当に長いとはいえず、法が禁じる賠償予定には当たらないと請求を認めた。

個人の利益大きい 賠償予定当たらず

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

事案の概要

 従業員甲は会社に平成23年4月に入社した。同26年10月、甲は会社の公募留学制度の選考に自ら応募し、同27年1月、公募留学候補生として選抜され、同28年7月~同30年5月までの間、同制度を利用して留学し、同年6月10日帰国した。そして、同年10月31日、自己都合により会社を退職した。

 会社の公募留学制度は、国際的視点に立った視野の広い人材の育成、グローバルな環境下でリーダーシップを発揮できる人材の育成を主旨として、経営学修士(MBA)課程設置大学、ロースクール、公共政策大学院等を進学先として制定し、進学先地域については、アメリカ、ヨーロッパ、アジアおよび国内の4地域から学校の選択が可能なものであった。甲は、公募留学制度の主旨に従って自ら志望校を決定し、平成28年3月、志望校のうち第7志望のバージニア大学MBA学科に合格し、同大学に進学することとした。甲は同留学に際し、会社に対し、「留学期間中に…特別な理由なく退職する場合あるいは解雇される場合、また、留学終了後5年以内に…特別な理由なく退職する場合あるいは解雇される場合には、当該留学に際し貴社が負担した留学に関する以下の費用を退職日までに遅滞なく弁済することを誓約いたします」と記載された誓約書(本件契約書)を提出していて、会社は甲が提出する経費申請書などに基づいて甲が指定する口座に振り込むか、支払先に直接支払う方法で合計3045万219円支払った。

 会社は、留学終了後5年以内に自己都合により退職した留学費用は会社が甲に貸渡した貸金であるとして、消費貸借契約に基づき、留学費用3045万219円を求め、提訴した。

 本件の争点は、①消費貸借契約(留学費用に関する返還合意の有無)が成立しているか、②返還合意は労働基準法16条に違反しないかの2点である。

 本判決はおよそ以下のように判示して、会社の請求を全部認容した。

判決のポイント

(1)消費貸借契約の成否

 本件契約書には、…

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令和3年10月25日第3326号14面 掲載

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