東京リーガルマインド事件(東京地決平7・10・16) 就業規則に競業避止義務条項を追加 一方的変更は許されない

1996.04.01 【判決日:1995.10.16】
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就業規則の不利益変更の法理で判断

筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)

事案の概要

 X会社は、司法試験受験予備校を営んでおり、Y1はX会社の専任講師兼監査役であり、Y2は代表取締役の後監査役であった。Y1、Y2はX会社を退職後、会社を設立し、司法試験受験塾を開業したため、X会社が東京地裁に、Y1、Y2に対し右営業等の差止めに及んだ事件である。

 X会社は、差止めの根拠として、①Y1、Y2在職中に新設した就業規則条項「従業員は、会社と競合関係にたつ企業に就職、(出向、役員就任、その他形態のいかんを問わず退職後2年以内は関与してはならない。従業員は、会社と競業関係にたつ事業を退職後2年以内に自ら開業してはならない」、②Y2がXに対して提出した競業避止義務を明記した誓約書等を主張した。

決定のポイント

1、競業避止義務を定める特約に基づく競業行為の差止」請求の可否――競業行為の差止請求は職業選択の自由を直接制限する等に鑑みると、実体上の要件として当該競業行為により使用者が営業上の利益を現に侵害され、または侵害される具体的なおそれがある場合のみ請求することができる(不正競争防止法3条1項類推)。

2、就業規則を変更して労働者の退職後の競業避止義務を定める条項を追加することは、労働条件の不利益変更と合理性に関する判例法理に照らして判断すべきである。本件では適用対象となる従業員の職種を限定していると解され、競業禁止期間は退職後2年間であり、その合理性を肯定できる。

3、就業規則によるY1に対する差止請求は、X、Y1間で競業する業務に就く場合は事前に協議する旨の特約によって就業規則上の義務は免除されているし、Y2に対する差止請求は前記一の要件を満たしていないとしていずれも申立てを却下した。

応用と見直し

 決定文は詳細であり、学術論文のように問題点を掘り下げ、この種の紛争処理について一石を投じようという意欲あふれるものとなっている。

競業行為の差止めの要件

 本決定は、…

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平成8年4月1日第2099号10面 掲載

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