信愛学園事件(横浜地判令2・2・27) 幼稚園園長を有期雇用、園児事故などで雇止め クビ決定後の問題重視せず

2020.11.12 【判決日:2020.02.27】
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 約10年間有期契約で勤務した幼稚園の園長が、雇止めされたため労働契約上の地位確認を求めた。横浜地裁は、職務の内容等から元園長の契約を労働契約とした。慣例で定年や任期もないなど更新期待に合理的理由があるとしたうえで、園が雇止めの理由とした園児の転落事故は、理事会で雇止めを決定した後のもので更新拒絶の理由として重視できないと判断。無期転換も認めた。

更新に合理的期待 慣例で任期もなく

筆者:弁護士 岩本 充史

事案の概要

 Xは、Yが経営するA幼稚園(以下「本件幼稚園」)において、1年間の有期契約を複数回更新しつつ園長を務めていた。本件は、Xが、Yから契約の更新拒絶をされたことについて、Yに対し、XとYとの契約は労働契約であり、更新拒絶には客観的合理性がなく無効であるうえ、Xは期間の定めのない労働契約への転換の申込みをしたと主張して、労働契約に基づき、期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求める事案である。

 Xは、昭和22年生まれで、平成21年4月1日から、本件幼稚園の園長として勤務していた。Xは、Yの理事であり、評議員でもあった。

 Xは、Yとの間で「雇用に関する契約書」、「雇用に関する契約書」、「労働条件通知書」、「雇用契約書」とタイトルは変遷しているが、毎年、契約が更新されていたが、Yは平成29年1月29日の理事会においてXについては平成29年度限りで退任させることについて理事会に参加していた理事が全員賛成し、Xに伝える時期は理事長に一任された。

 そして、Yは、Xに対し平成29年11月14日、30年4月1日以降は契約を更新しない旨を通告し、雇止めした。雇止めの理由は、①遊具からの園児の転落事故に関する対応に問題があったこと、②XやXの娘であるJに対する不当な優遇措置があったこと、③理事会前に園長を含む人事体制を他の職員に口外してしまい、法人に混乱をもたらしたこと、④法人内の意思決定について全く理解しておらず、これらの問題に対する自覚や反省がみられなかったこと等であった。

 その後、XはYに対し、無期労働契約への転換を申し込んだ。

 本判決は、Xの期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求、未払い賃金等の請求を認め、慰謝料請求は棄却した。

 本件の争点は、(1)XとYとの間の労働契約の有無、(2)(1)が認められる場合、本件更新拒絶の有効性、(3)不法行為の成否および慰謝料額であるが、(2)について紹介する。…

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令和2年11月16日第3281号14面 掲載

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