ジャパンチキンフードサービス事件(東京地判令6・10・22) セクハラ事実確認で会社協力、使用者に責任は ヒアリングせず対応不十分
飲食店店員が店舗でセクハラを受けたとして、会社に慰謝料等を求めた。会社は、相談に応じ店内の録画データを提供したなどとして、安全配慮義務違反はないと主張した。東京地裁は、セクハラ事実を認めたが、当事者から詳細な聞取り調査をせず、加害者への指導や被害者に謝罪もなかったことから、会社対応として不十分と判断。慰謝料30万円の支払いを命じた。
加害者へ指導なく 慰謝料額は30万円
筆者:弁護士 中井 智子(経営法曹会議)
事案の概要
ダイニングバー、居酒屋等の飲食店を営み、都内に複数の店舗を有している被告会社に勤務していた原告が、勤務先で性的嫌がらせを受け、精神的苦痛を被ったとして、被告に対して、使用者責任または安全配慮義務違反を理由とする債務不履行責任に基づいて、慰謝料300万円および遅延損害金を求めた事案である。
原告は、令和3年3月に、被告会社の従業員として雇用され、都内にある複数の飲食店で勤務した後、令和4年11月下旬頃、本件店舗での勤務を開始した。
原告は、被告に対し、令和5年4月24日付け「ご連絡」と題する書面を送付し、令和4年11月27日午前4時頃、本件店舗において、同店の外国人スタッフであったaから、性的嫌がらせを受けたと主張して、損害賠償を請求した。
争点は、原告に対する性的嫌がらせの事実の有無、事実があるとした場合の使用者責任の有無、安全配慮義務違反の事実の有無および損害額である。
裁判所は、被告の使用者責任に基づく損害賠償および安全配慮義務違反に基づく損害賠償、それぞれを認定し、合計60万円の慰謝料および遅延損害金の支払いを命じた。
判決のポイント
原告に対する性的嫌がらせの有無について
原告は、令和4年11月27日午前4時頃、…
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