ビジネスパートナー事件(東京地判令4・3・9) 地域限定職へ変更手続きせず基本給一部返金!? 転勤拒み12万円支払い命令

2022.12.15 【判決日:2022.03.09】
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 両親の世話を理由に転勤拒否した総合職の従業員に対し、会社が地域限定職の基本給との差額を返還するよう求めた。転勤を拒んだ場合、職群を変更して月2万円を半年分返すと規定していた。東京地裁は、賃金全額払の趣旨に照らし、労働者に過度の負担は生じず返還規定を有効と判断。転勤の可否を正確に申告すれば返還を免れることができるなどとして規定は合理的としている。

「全額払」反しない 規定は合理的内容

筆者:弁護士 岩本 充史

事案の概要

 本件は、Xが、その従業員であるYに対し、給与規定に基づき、支払済みの基本給の一部である12万円の返還等を求めた事案である。

 Xは、リース事業等を業とする株式会社である。Yは、平成27年7月1日から正社員としてXに雇用された。

 Xの給与規定には、正社員の給与は、職群、職格、職級ごとに定めるとあり、職群の区分について、(1)グローバル総合職、(2)総合職、(3)地域限定総合職等がある。転勤可能者を確保する趣旨から、総合職と地域限定総合職との間に月額2万円の賃金差を設けたうえ、(グローバル)総合職の正社員が会社が命じる転勤を拒んだ場合は、着任日が到来しているかどうかにかかわらず、半年遡って差額を返還し、翌月1日より新たな職群に変更するとしている(以下「本件規定」)。職群に変更が必要になった場合は、所定の手続きをもって1週間以内に申請する必要があった。

 Yは入社以降、令和2年2月時点までは、職群は総合職であり、同時点における基本給は月額33万2500円であった。他方、仮に同時点において地域限定総合職であったとすると、その差額は月額2万円であった(以下「本件差額」)。

 Yは、平成30年4月、Xが実施した転勤の可否等に関するアンケートに両親の世話があり、遠方へ転勤が困難であるため、地域限定総合職を希望する旨記載したが、地域限定総合職への職群変更の申請手続きを行わず、従前のとおり総合職としての賃金を受領していた。

 Xは、令和2年2月28日、Yに対し、(東京から)X大阪支店への転勤を言い渡した(以下「本件転勤命令」)が、Yはこれを拒否した。Xは、同年3月1日より、本件規定に基づき、Yの職群を地域限定総合職に変更し、同月分の給与から、基本給を月額31万2500円に変更した。さらに、Xは、Yに対し、本件差額の半年分である12万円の返金を請求した。本判決はXの請求を認容した。

 争点は複数あるが、本件規定の有効性について紹介する。…

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令和4年12月19日第3381号14面 掲載

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