ITサービス事業A社事件(東京地判令4・11・16) 在宅勤務の時間虚偽報告、出社や賃金返還請求 欠勤控除を放棄したと認定

2023.05.25 【判決日:2022.11.16】
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 在宅勤務を禁止されたが出社を拒否した従業員が賃金支払いを求めたのに対し、会社は勤務時間の報告に虚偽があったとして賃金返還を求めた。東京地裁は、会社が在宅中の不就労時間を問題にせず賃金を払ってきたとして賃金控除を放棄したと判断。勤務場所を自宅としたうえ出勤を命じる業務上の必要性は認められず、不就労を会社の責めに帰すべき事由による休業とした。

不就労問題にせず 休業は使用者責任

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 被告はITソフト開発やSES(編注:システムエンジニアリングサービス)などの事業を行っている会社、原告は被告の従業員(職種デザイナー)である。

 原被告間の労働契約には就業場所は「本社事務所」と記載されているものの、原告が被告事務所に出社したのは初日のほか一度だけであった。原告は業務で使用するメッセージ機能において、他の従業員との間で、被告代表者について「これだけ人辞められててまだ理解できないのかな…負のスパイラルですね…だから、福利厚生とかを良くしてホワイトっぽくしてるんですね」などの内容を含むやり取り(以下「本件やり取り」)を行った。本件やり取りを知った被告代表者は、原告に対し、管理監督の観点からリモートワーク禁止とし、令和3年3月4日から、会社への通常出勤をするよう求め(以下「本件出社命令」)、出勤がない場合は欠勤扱いとすることなどの内容のメールを送信した。しかし、原告は出勤しなかったため、被告は欠勤を理由に3万8095円のみを支払った。

 そこで、原告が被告に対し3月4日以降、労務の提供をしていないのは「被告の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)によるものであるとして、3月4日以降の賃金の支払いを求めた。これに対し、被告は、原告に対し、原告が工数実績表にて報告していた勤務時間には虚偽があったとして一部賃金の返還を求める反訴を行った。なお被告の業務用パソコンには、当該パソコンのキー操作数、マウス操作数、見ているウィンドウタイトル等を取得するためのツール(以下「本件ツール」)がインストールされていた。

判決のポイント

 ①被告代表者自身が、(1)デザイナーは自宅で勤務をしても問題ない、(2)リモートワークが基本であるが、何かあったときには出社できることが条件である旨供述していること、…

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令和5年5月29日第3402号14面 掲載

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