紀北川上農協事件(大阪地判平29・4・10) 57歳からスタッフ職、本人同意なく昇給停止は 定昇・賞与なしの改訂有効

2018.02.28 【判決日:2017.04.10】
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 満57歳から定昇や賞与なしのスタッフ職とされた元職員が、退職後に未払賃金を求めた。昇給「できる」から「しない」と規定が改訂された。大阪地裁は、就業規則の不利益変更に関し、経営上高度の必要性はないが、年齢的に賃金は高いなど変更後の内容は相当性を欠くとはいえず、労組が反対していないことも考慮。なお、規定からは昇給等の権利は生じないとしている。

年齢的に賃金高額 労働組合反対せず

著者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)

事案の概要

 Xら(10人)は、いずれもY農協の元職員であり、平成27年4月1日までに定年等により退職した者である。

 Y農協は、平成13~15年度まで3期連続で事業損失を計上していた。

 Y農協は平成14年度以降、就業規則および給与規定(以下「就業規則等」)を改訂し、満57歳に達した職員をスタッフ職とする制度を設立する等の変更を行った(以下「本件変更」)。スタッフ職になると、①基本給はスタッフ職移行直前の基本給と同額、②賞与は原則として支給しない、③定期昇給は実施しない、④Y農協が取り扱っている共済契約への加入を勧誘する業務(推進業務)の目標数値は軽減される、としていた。

 Y農協には職員により組織される労働組合(以下「本件組合」)があるが、本件変更に対して明確に反対の意思表示をしなかった。Y農協は、本件変更に際して、本店各課長や支店長等に対する制度の制定や改正に関する説明、全職員研修会における説明等を行っていた。また、各支店には、就業規則等の規定集が備え付けられており、職員は就業規則等の内容を確認できたほか、イントラネットで閲覧も可能であった。

 Xらは、平成21年から24年までの間にスタッフ職となった。Xらは、本件変更につき、明示的な同意をしたことはなかったが、スタッフ職制度の適用直後まで不服を述べたこともなかった。

 Xらは、本件変更は、労働条件を労働者に不利益に変更するものであって、労働契約法9条および10条の要件を満たさないことにより、効力が及ばないとし、…

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平成30年2月26日第3150号14面 掲載

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