美容室A事件(東京地判令6・10・15) レジから釣銭500円玉取ったが客からのチップ!? 売上金取得して解雇有効に
レジから売上金を窃取したとして、解雇された美容師が地位確認等を求めた。防犯カメラには、釣銭以外に500円硬貨を取り出す映像が記録されていた。東京地裁は、会計の際「チップ」を受け取ることはあったが、顧客から代金を上回る金額を受けていなかった4回の会計で、計2000円を不法に得たと認定。被害は少額だが、労使間の信頼関係を破壊したとしている。
被害総額は2000円 信頼関係を“破壊”
弁護士:岩本 充史
事案の概要
Xは、令和2年8月1日から本件美容室で勤務するようになった。Xには、以前に勤務していた美容室から引き続いて、本件美容室に来店する顧客がおり、Xは、会計の際、当該顧客から本件美容室の料金を上回る金額をチップとして受領することがあった。
美容室を運営していたYは、本件美容室の売上額とレジ内の現金額が合わない場合が多いとの認識の下、同3年3月頃、本件美容室のレジ付近に防犯カメラを設置した。
本件美容室においては、1日の営業終了後、売上額とレジ金額が合っているかを確認していた。Yは、Xの勤務期間中に、従業員に対し、売上額とレジ金額が合わないとして負担を求めたことが3~4回あったが、自らその差額全額を負担する場合もあった。
Yは、同3年10月8日、Xに対し、Xが本件美容室の売上金を不法に領得していたことを理由に本件解雇の意思表示をした。
本訴は、Xが、普通解雇の意思表示が無効であると主張して、Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案である。なお、YはXに対し、反訴を提起しており、これはXが継続的に売上金を不法に領得していたと主張して、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償等の支払いを求めた。
本判決は、本訴請求を棄却し、反訴請求については、2200円およびこれに法定利率の遅延損害金の限度で認容した。
判決のポイント
Xが本件美容室の売上金を不法に領得していたか否か及びその額等
Xは、会計の際、顧客に対し、実際の釣銭額よりも500円少ない額を交付しているにもかかわらず、本件防犯カメラ映像において、顧客から釣銭が足りない旨の指摘を受ける様子はうかがわれないこと、…Xは、C(編注:顧客)から代金額を上回る金額の交付を受けながら、釣銭を交付しておらず、Cの証言中には、差額をXに取得させたものである旨を述べる部分があることに照らせば、上記の各機会については、…
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