日本サーファクタント工業事件(東京高判令6・8・28) 契約社員が60歳定年に、再雇用され賃金減額は 6割減でも高年法違反せず

2025.07.17 【判決日:2024.08.28】
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 契約社員として12年間勤務して「定年」となった従業員が、退職金の不支給や再雇用後の賃金額は不合理として争った事案の控訴審。東京高裁は、専門性を有する契約社員には配転等がないほか相応の年俸が支払われており、退職金不支給でも不合理でないと判断。定年後は職務内容が変更され、地域相場との比較から、賃金が約6割減っても高年法の趣旨に反しないとした。

職務内容が変更に 退職金請求も棄却

筆者:弁護士 小鍛冶 広道(経営法曹会議)

事案の概要

 平成18年に被控訴人(一審被告)に契約社員(毎年6月21日から1年間の有期労働契約)として雇用され、設備環境部長の役職にあった控訴人(一審原告)について、契約を反復更新してきた(ただし、当該労働契約には満60歳到達時まで自動的に延長する旨の定めがあった)。控訴人が平成30年10月に満60歳に到達することから、就業規則における定年の定めに則り、同年6月21日を始期とする有期労働契約の終期は同31年3月20日とされた(当該事実を裁判所は「定年退職」としている)。控訴人と被控訴人は、同月21日以降、控訴人の役職を環境部長付と変更し、給与年額を約6割減額(約904万円↓約383万円)したうえで、毎年3月21日から1年間を契約期間とする有期労働契約を締結・更新した(当該事実を裁判所は「再雇用」としている)のち、控訴人は令和5年9月頃に被控訴人を退職した。

 以上の事実経過において、被控訴人の社員(正社員)と契約社員であった控訴人との間で退職一時金の支給に関する相違があるのは旧労契法20条に違反するか(争点①)、控訴人に関する再雇用後の賃金減額は高年法に反し違法か(争点②)、控訴人に関する再雇用後の賃金額が旧労契法20条に反し違法か(争点③)、等が争われた(実際の争点は多岐にわたる)。

 判決は、一審(宇都宮地判令6・1・12)の判示を引用しつつ適宜補正して以下のとおり述べ、上記争点①②③に関する控訴人の請求をいずれも否定した(なお、上告棄却・不受理、最一小決令7・1・30)。

判決のポイント

 (1)(争点①について)社員と契約社員である控訴人との間で現に担当していた業務そのものの内容については違いがなかったものの、控訴人のように専門性を有することから採用された契約社員は、雇用契約書において業務内容が定められ…

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令和7年7月28日第3506号14面 掲載
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