亮正会高津中央病院事件(平4・2・25東京高判) 初審命令以降の事情変更と中労委命令

1992.07.20 【判決日:1992.02.25】
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“事情変更を斟酌”が一般的

筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)

事案の概要

 事実関係は複雑なので、論点に関係のある部分のみに限って紹介する。

 T病院において1年間の契約で更新を重ねて来たパートタイマーの看護助手2名(X1、X2)の更新拒絶問題で、初審神奈川地労委は、右取り扱いを不当労働行為と認定し、T病院に2名の原職復帰とバックペイ、団交応諾、ポストノーティス等を命じた。

 T病院が、中労委にこれを不服として再審査申立てを行い、中労委命令が発せられるまでの間に、X1、X2の申請に基づき裁判所から1年間の地位保全及び賃金仮払いの仮処分が発せられた。T病院は右仮払いを履行するとともに、現実に看護助手として就労させ、更に右1年の経過後は新たに雇用契約を締結して引き続きX1、X2を就労させた。そして、その後中労委命令発令の前にX1は退職するに至ってしまった。

 中労委は、右の事情の変化について全く言及することなく初審命令をそのまま維持したため、T病院は、東京地裁に右命令の取り消しを求める訴えを提起した。

 東京地裁は、T病院の請求を容れ、本件命令は、右の事情変更により救済利益や救済の必要性が欠けており、違法でとあるとして全面的に取り消した。

 中労委は、右を不服として、東京高裁に控訴したところ、東京高裁は再審査申立て手続きに関して次の通り判示し、命令の一部を取り消し、その余の部分はこれを維持した。

 「控訴人(注「中労委」以下同じ)は、地方労働委員会の救済命令の後に生じた事由を考慮して、同命令の変更等をすべきかどうかについて検討する。控訴人は、申立てにより又は職権で地方労働委員会の救済命令を取り消し、承認し、若しくは変更する完全な権限をもって再審査し、又はその処分に対する再審査の申立てを却下することができるのであり(労働組合法25条3項)、この場合においては、控訴人は、調査及び審問により事実を認定したうえで再審査についての命令をすべきものとされ……これらの定めを総合すれば、控訴人は、再審査について命令をするにあたり、地方労働委員会の認定事実に拘束されることなく、独自の調査及び審問の結果によって命令時における事実を認定し、これに基づいて命令をすべきであることが明らかであるから、控訴人は、地方労働委員会の救済命令の後に生じた事情をも考慮して、救済命令を取り消し、承認し又は変更すべきであるということができる」。

判決のポイント

 不当労働行為事案において、初審命令に不服として当事者が中労委に再審査申立てを行い、…

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平成4年7月20日第1921号10面 掲載

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