国・八王子労基署長事件(東京地判平26・9・17) 責任者就任後3カ月で自殺、入社前のうつ病原因? 安定した状態の障害が悪化 ★
入社前にうつ病となったカフェ店員が、責任者就任後3カ月で自殺した事案。業務上の「特別な出来事」は存在せず労災不支給とされ、遺族が提訴した。東京地裁は症状は安定しており、業務の強い心理的負荷で精神障害を発症したと判断。仮に業務以外の原因で発症したと判断しても、強い負荷をもたらす出来事が複数あり、特別な出来事に準ずるものが存在とした。
総合して負荷強度 「特別な出来事」に
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
亡Bは、平成17年5月に大規模商業施設内での飲食店経営を事業内容とする甲会社にアルバイトとして採用され、その後正社員となり、平成18年9月1日(以下、特に断らない限り平成18年の出来事は月日のみを記載)に、従前、接客業務に従事していた店舗の店舗責任者に就任した。
本件店舗は学生アルバイトの退職により慢性的な人出不足の状況にあった。そのため、亡Bは、自らシフトに入るとともに、他店舗に対しヘルプ要員の要請を行い派遣してもらうことで凌いでいたが(亡Bは、店舗責任者に就任して以後、4週8休という所定休日を取ることができない状態であったが、時間外労働時間数は平均するとほぼ月45時間に近い水準であった)、10月以降も、退職申出者が止まらず(なお亡Bは、11月15日頃に信頼していたIが本件店舗を離れることを知らされて号泣するなどしたことがあった)、12月冒頭時点の従業員15人のうち7人は年末年始に減員することが見込まれていた。なおシフトの交代等を考慮すると、1日6人程度の従業員は必要であった。…
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