岡山市立総合医療センター(抗告)事件(広島高裁岡山支決平31・1・10) 外科医に配転命じ診療禁止、有効とした一審は 職種限定の「黙示合意」あり
勤続25年の外科医が、パワハラなどを理由の配転は無効として、地位確認の仮処分を求めた。一審は、配転の必要性を認めて診療できないこともやむを得ないと判断したが、高裁は、職種限定の「黙示の合意」を認定。極めて専門的で高度の技能を踏まえて雇用され、医師以外の勤務形態は予定していたとは認められず、配転無効とした。パワハラの事実も認めなかった。
極めて専門的技能 異動は予定されず
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y法人は市立A病院(以下「法人病院」)を設置運営する医療法人である。
Xは、平成4年4月に医師として稼働し始め、25年10月、法人病院の前身であるA病院で勤務を開始した。Xは、専門医、指導医、認定医等の資格を有しているが、各資格は更新を要し、その更新前の一定期間に、指定された内容および件数の手術に関与していること等が必要である。
Xは、平成26年4月、法人病院の2つの科の外科主任医長に任命され、27年1月には消化器疾患センター副センター長を兼務し、28年4月には消化器外科部長となった。
この間、平成26年4月に、2人の医師がXの言動を理由として退職し、同年2月および27年12月には、ある看護師よりY法人に対し、Xの言動に苦情が寄せられていた。
平成28年10月と11月に、Y法人からXに対し、他の病院への移籍を打診したがXは断った。
平成28年12月、Xの上司B医師が参加した手術において、3人の患者に緊急の再手術等を要する事態となり、同月のカンファレンスにおいて、XはB医師に対し、しばらく手術をするのはやめた方がいいと発言した。
平成29年1月、Y法人はXに対して、外科部長および副センター長から解任し、がん治療サポートセンター長に任命する旨の配転命令(以下「本件配転命令」)および同年4月より外科の一切の診療に関与することを禁止する命令(以下「本件診療禁止命令」)を出した。これにより、Xの給与は約140万円から約90万円に減少した。
XよりY法人に対し、…
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