ゆうちょ銀行事件(水戸地判令5・4・14) 約10年前に受けた嫌がらせ違法と1億円求める 職場環境の配慮を会社怠る

2024.10.17 【判決日:2023.04.14】
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 約10年前に受けた上司からの退職強要等の嫌がらせは違法として、退職した元従業員が会社に対し1億円の損害賠償を求めた。水戸地裁は、請求権の一部は時効消滅していないとしたうえ、退職勧奨の言動は社会通念に照らし度が過ぎたと判断。職場環境配慮義務違反の債務不履行を認めた。髪型をいじった別の上司の行為も制止すべきだったとして、計50万円の慰謝料を命じた。

上司言動に慰謝料 合計50万円が相当

筆者:弁護士 岩本 充史

事案の概要

 本件は、旧郵政省に採用され、郵政民営化後はYに雇用されて就労していたXが、Yに対し、Xは、平成19年9月18日以降、上司から恣意的に担当業務を制限されたり、同僚から悪口を言われたりする嫌がらせを受け続け、これらの行為について、Yは職場環境配慮義務を怠ったなどと主張して、債務不履行に基づき、損害等の支払いを求めたものである。損害金合計1億1000万円(慰謝料1億円と弁護士費用1000万円の合計)および遅延損害金の支払いを求めた事案である。

 本件の争点は、①Yの職場環境配慮義務違反の有無、②消滅時効の成否であるが、①の職場環境配慮義務違反の有無の判断部分について紹介する。

判決のポイント

 平成23年6月からYの千葉地域センター課長代理の地位にあったBは、Xに対し、平成25年11月12日、退職届を書いたかと…尋ねる発言をし、平成26年8月13日、自身の退職届を渡して、これを千葉地域センター所長へ提出するよう述べたことが認められる。…BのXに対する各言動は、Xに対して、その上司であったBにおいて、Yを退職するよう示唆し、さらに、Xが自らYを退職するよう精神的に圧力をかける行為と見られてしかるべきものであり、客観的に見て、社会通念に照らし、度を過ぎた言動というべきである。…BはXが配属されていた職場における課長代理の地位にあり、Xの上司として、Xが精神的に安全な環境で執務できるその職場環境を整備するべき立場にあったのであるから、…BのXに対する各言動は、直接、Yにおいて、Xがその職場において精神的な健康の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するべき義務を怠ったものと解される。

 したがって、この点において、Yには、Xに対する職場環境配慮義務違反の債務不履行が認められる。

 係長としてXの上司であったDは、…

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令和6年10月21日第3469号14面 掲載
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