広島西郵便局事件(広島地判平5・4・14) 短期の年次有給休暇の請求と使用者の時季変更権

1994.01.24 【判決日:1993.04.14】
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代替配置の配慮に欠ける

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

事案の概要

 甲は(原告)は、郵政事務官として広島西郵便局(以下、西郵便局という)郵便課に所属していた昭和61年9月3日に、時季を9月13日及び14日とする年次有給休暇の請求書を提出したが、A課長は右年休請求を10月5日から同21日までの間に変更した。しかし、甲は9月27日、A課長に対し、「この間の年休は、10月26日と27日にしてくれ」との申出をし、A課長は「あれは10月5日から10月21日までの間に時季変更すると言ったはずだ」と答えた。その後、甲はA課長のところへ来て、「課長。ふん」と言い、10月26日および27日を時季指定した年休請求を机の上に置いた(以下、本件年休請求という)。A課長は、本件年休請求については業務上の支障が予測されることから、時季変更するかもしれない旨申し向けたところ、甲はA課長に対し、「ちゃんと出せよ。やかましいやい」と暴言を浴びせ、A課長が注意する間もなく立ち去った。A課長は、年休の付与を種々検討したが、最終的には甲に本件年休請求にかかる両日に年休を付与すれば事業の正常な運営を妨げる事情があると判断した。そこで、A課長は、10月20日、「甲君、9月27日に出された10月26日、27日の年休は業務に支障があるので11月に時季変更します」と口頭で通知した(以下、本件時季変更権という)ところ、甲は「受けんぞ。何を言うか」と発言した。A課長は10月24日、甲に対して重ねて本件年休は11月に時季変更する旨通知するとともに、両日の勤務に就くように命じたが、甲は「それは聞くわけにはならんね」と発言した。そして、甲は、10月26日、同27日、出勤することなく所定の勤務を欠いた。その結果、右両日の西郵便局郵便課の業務に現実の支障が生じた。なお、甲の欠勤に伴い、西郵便局においては右両日就労電報を発信したほか、10月27日には西郵便局庶務課長であるBらが甲の自宅に赴き、在宅していた甲に対して出勤するように再三促したが、甲はこれを聞き入れず、右両日に欠勤したものである。

 原告の右無断欠勤の事実は国家公務員法98条1項、99条及び101条1項に違反し同法82条各号に、A課長に対する9月27日の暴言の事実は同法99条に違反し同法82条1号及び3号に、それぞれ該当する、として、被告広島西郵便局長は甲に対し、右各法令並びに人事院規則人事院規則12-0及び郵政省職員懲戒処分規定に基づき甲に対する本件処分(昭和61年12月18日付懲戒戒告処分)に及んだものである。これに対し、甲は本件処分は違法であるとして提訴した。

判決のポイント

 本判決は、およそ次のように述べて、…

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平成6年1月24日第1993号10面 掲載

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