時事通信社事件(平4・6・23最三小判) 長期年休請求と使用者の時季変更権 ★

1992.08.20 【判決日:1992.06.23】
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使用者に「年休取得配慮義務」

筆者:弁護士 安西 愈(中央大学講師)

事案の概要

 Yは、上告人会社第一編集局社会部の記者として科学技術庁の科学記者クラブに所属していたが、Yが担当する分野は科学技術全般に及び、他省庁にもわたっていた。そして、Yは1人でこれをカバーしていた。

 Yは繰越分を含め年休を40日有していたので、休暇をとって欧州に行き、同地の原子力発電問題を取材したいと考え、昭和55年6月23日に社会部長に対し、口頭で、同年8月20日ころから1カ月の年休をとりたいと申し入れ、同年6月30日、所定の休暇及び欠勤届出(この間の休日等を除いた実日数24日の年休)をした。これに対し、社会部長は、科学技術記者クラブの常駐記者は本人1人だけであって1カ月も専門記者が不在では取材報道に支障を来すおそれがあり、代替記者を配置する人員の余裕もないとの理由を挙げて、Yに対し、2週間ずつ2回に分けて休暇を取ってほしいと回答した上、同年7月16日付けで8月20日から9月3日までの休暇は認めるが、9月4日から同月20日までの期間中の勤務を要する日に係る右時季指定については業務の正常な運営を妨げるものとして、時季変更権を行使した。

 その後、Yの所属する労働組合である時事通信労働者委員会と会社との間で本件時季指定と時季変更権の行使に関し、団体交渉が行われたが、妥協点を見いだせなかった。

 ところが、Yは8月20日に出発し、9月20日まで勤務に就かなかった。そこで、会社は、同年10月3日にYに対して業務命令に反して就労しなかったことを理由として、譴責処分を行い、あわせて同年の冬季賞与の支給に際し10日間の欠勤を理由として4万7000円余を控除して支払った。

 この事件について第一審の東京地裁の判決(昭63・7・15)は、会社の時季変更権の行使を適法と認め、本件処分を有効と判示した。一方、控訴審である東京高裁は、本件会社の時季変更権の行使は違法であると判決(昭63・12・19)し、本件処分を取消した。

 このように同じ事実関係につき、第一審と第二審で判断がくいちがったのが本事案である。

判決のポイント

 最高裁は、次のように述べて、第二審の判決を取り消し、差し戻した。…

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平成4年8月10日第1924号10面 掲載

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