フレックスで長時間残業? 始業終業を自ら決定 申告どおり割増賃金支払うか

2012.09.03
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

Q

 当社では、一部の部門でフレックスタイム制を適用しています。最近、対象者の一人が、特に業務煩忙とも思えないのに、長時間の残業実績を申告するようになりました。調整するよう注意したところ、「始業・終業時間の決定権は労働者側にあるはず」と反論します。申告どおり、割増賃金を支払うほかないのでしょうか。【埼玉・M社】

A

総枠超えるなら承認制に

 フレックスタイム制では、始・終業時刻を労働者の自主決定にゆだねます。その代わり、1日・1週間単位で法定労働時間を超えた労働時間が生じても、割増賃金の支払いを要しません(労基法第32条の3)。

 このため、一般に使用者は出退勤時刻の指定ができないと解されています。しかし、フレックスタイム制を採る場合、裁量労働制と異なり、実労働時間に対応して賃金の支払義務が生じます。

 通常の労働時間制に基づく労働者に関しては、「指示なし」の残業時間は次のとおり取り扱います。使用者の指示に反し、業務上の必要性がないにもかかわらず、「自発的な居残り残業」を行っても、使用者は割増賃金の支払義務を負いません。

 一方、指示がなくても、「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、『黙示』の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働」となります(昭25・9・14基収第2983号)。

 ところが、フレックスタイム制については、その建前上、使用者が時間外労働を命じる(またはそれが必要な量の業務を1日で処理するよう命じる)ことはあり得ません。だからといって、すべて「自発的な居残り残業」であるとして切り捨て処理するのも乱暴な話です。

 実務的な対応として、「清算期間中の総労働時間を超えて時間外労働に至る場合(またはあらかじめ設定した時間外労働枠を超えて労働する場合)には所属長の承認を要する」等のルールを設定するのは可能と解されます(安西愈「改正労働時間法の法律実務」)。

 コアタイムを設けている企業では、「1カ月の残労働日数×コアタイムの労働時間」を別に確保したうえで、時間外が発生する可能性がある場合には承認を必要とする等の運用基準を設定する必要があるでしょう。

※内容は掲載当時のものです。法改正等により内容に変更が生じている場合がございます。

関連キーワード:
平成24年9月3日第2887号16面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。