始業のみ繰り下げできるか 終業も原則スライドだが 残業した翌日の出勤遅らす

2012.08.20
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Q

 顧問先の賃金計算をチェックしていたところ、不適切な形で「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ」が行われているのを発見しました。「繰上げ・繰下げは、始業・終業時刻を同時にスライドさせるのが原則です」と指摘したところ、「どこにそんな根拠があるのか」と反論されました。どう説明すべきでしょうか。【神奈川・I社労士】

A

時間短縮しても割増を

 就業規則の絶対的必要記載事項の中に、「始業・終業時刻、休憩、休日等」に関する事項があります(労基法第89条第1号)。これに基づき、就業規則では所定労働時間を定める条文を設けていますが、「1日の所定労働時間を○時間とする」と明記するスタイル、「始業・終業時刻、休憩時間のみ記載する」スタイルの両方が見受けられます。

 併せて、「業務上の必要がある場合、始業・終業時刻を繰り上げ、または繰り下げることがある」旨、定める企業が大多数です。

 就業規則で定める1日の所定労働時間(規則上、明記しているか否かはともかくとして)を変動させないためには、「始・終業時刻を、同じ長さだけ、同じ方向にスライドさせる」必要が生じます。

 実務上、よく生じるのは、時間外労働が発生した翌日に、始業時刻を繰り下げるケースです。始業8時、終業5時(休憩1時間)という会社を例に採りましょう。

 前日2時間の残業が発生し、始業を10時に繰り下げたとすると、通常は終業時刻も7時に繰り下がります。それにもかかわらず、終業時刻を5時に据え置いたとすれば、その日の所定労働時間は6時間となります。

 結局、通常の日に「今日は3時で早仕舞いします」と宣言するのと同じ形となります。つまり、社長さんのことばを正しく言い換えれば、「始業時刻を繰り下げた日に、早仕舞いしてならない理屈はないだろう」となります。

 しかし、早仕舞いすれば、それに応じた適切な賃金処理が必要となります。労基法の基本となりますが、前日の残業2時間と当日の早帰り分2時間を単純に相殺できません。1日10時間の労働が行われた場合、他の日の労働時間を短縮しても、2時間の時間外労働の事実は消えません(25%の割増が必要)。短縮する時間幅が大きい場合、休業手当の要否もチェックする必要があります。

※内容は掲載当時のものです。法改正等により内容に変更が生じている場合がございます。

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平成24年8月20日第2885号16面 掲載

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