職務限定でも配転できるか 事業撤退し仕事なくなる 就業規則には根拠規定あり

2012.05.14
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Q

 貿易業務のエキスパートとして中途採用した従業員がいますが、事業撤退により担当職務が消滅してしまいます。当社の就業規則では、「業務上の必要がある場合は、従事する業務の変更を命じることができる」という一文が盛り込んであります。これを根拠に、他の業務への配転を命じることができるでしょうか。【長崎・G社】

A

「特約」は同意得て変更を

 いわゆる「総合職」型の正社員は、採用時に、転勤・配転等の包括的同意が成立しているのが普通です。勤務地・職務限定の従業員とは労働条件が異なり、適用する就業規則の条文上も区別が設けられています。

 しかし、お尋ねのエキスパート従業員は、職務内容は限定されているものの、賃金その他の労働条件面では他の総合職型正社員並み(一部はそれ以上)に処遇していると思われます。

 特にエキスパート従業員専用の就業規則が制定されていなければ、正社員用の就業規則が適用されているはずです。労働契約締結に際し、「使用者が合理的な就業規則を周知させていた場合、労働契約の内容は就業規則による」のが原則です(労働契約法第7条)。

 ただし、「労使がそれと異なる労働条件を合意していた部分については、『第12条に該当する部分を除き』、この限りでない」とされています。

 「第12条に該当する」とは、「就業規則の最低基準効」が適用されるケースを指します。労働契約の内容が就業規則を下回るときは、就業規則の規定が優先します。

 しかし、「第12条は、就業規則で定める基準以上の労働契約は、これを有効とする趣旨である」と解されています(平20・1・23基発第0123004号)。職務限定も、労働者にとって有利な個別特約とみなされます。

 こうした特約は、個別同意に基づいて変更すべきものとされています。パターンとしては、「①個別合意による変更、②合意によって設定した留保変更権行使による変更、③変更解約告知による変更」が考えられます(荒木尚志「労働法」)。

 ただし、変更解約告知については、労働契約法でも特別な立法的手当てがなされず、解釈論・立法論上の対応に委ねられているのが現状です。ご本人とよく話し合って、①の個別同意を取り付けるようお勧めします。

※内容は掲載当時のものです。法改正等により内容に変更が生じている場合がございます。

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平成24年5月14日第2872号16面 掲載

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