労経ファイル 2017年3月1日 第638号
巻頭資料
長時間労働規制――検討会・論点整理/新ガイドライン/企業名公表通達
36協定による労働時間規制のあり方を議論している①厚労省「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」が論点整理をまとめた。労基法改正により時間外労働の総量規制を行うべきだが、業務の繁閑などに対応できるよう柔軟性を持たせることが必要とした。過労死防止に向け、長時間労働規制の動きが強まるなか、本欄では、①をはじめ、年末に出された「②過労死等ゼロ・緊急対策」、同対策の指針となるべく新たに設けられた「③労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」、②において示された指導の実施・企業名公表等について説明した「④通達」を併せて紹介する。従来の「基準」の内容がさらに進められた新ガイドラインでは、管理者に自己申告制の適正な運用を求めている。
研究報告
厚生労働省「安衛法に基づく定期健診等のあり方に関する検討会報告書」
厚生労働省は、昨年末に「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」報告書を発表した。進展する高齢化やストレスチェック制度創設など労働者の健康管理を取り巻く状況の変化に対応したものとするため、定期健診項目等の詳細な検討を行った。労働者の健康状態の把握、労働時間短縮、作業転換といった事後措置による脳や心臓疾患発症防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることを目的として掲げた。定期健診の各項目がそれぞれ就業上の措置を講じるためのデータとして期待できることに触れ、保健指導においても活用されるべきとしている。健診実施率が89%と9割を切る従業員10~29人の小規模事業場における受診率の徹底を図ることが重要としている。異常所見者の医師等からの意見聴取も3割にとどまるため、健診後の事後措置の充実・徹底が必要とした。
行政資料
厚生労働省「都道府県別特定(産業別)最低賃金一覧」
特定産業の関係労使で決定する特定(産業別)最低賃金の決定状況を、厚生労働省が平成28年12月15日現在でまとめている。全国234産業のうち、800円以上(900円以上14産業を含む)は166産業に増大し7割を超えたが、産業別・地域別格差は大きいまま。地域別最低賃金が高い水準にある東京都と神奈川県(順に932円、930円)では、特定最賃が地域最賃を下回る逆転現象が継続し、同2都県の全産業で地域最賃が適用されていることから、存在意義が問われている。逆転現象は30都府県に及ぶ。地域最賃は大幅な引き上げにより全都道府県で700円台に突入したが、特定最賃は沖縄(2産業)、鹿児島(1)、宮崎(1)で600円台が残った。
調査資料
東京都「平成28年中小企業の賃金事情調査」
東京都「中小企業の賃金事情」調査によると、平成28年7月の全常用労働者の平均賃金は所定時間内賃金が34.8万円で0.4%の微増、所定時間外賃金が3.7万円(同11.6%増)、合計で38.5万円(1.4%増)となった。定昇、ベアの過去1年間の実施企業割合は68.2%、26.6%でともに減少。隔年調査の退職金関係は、大卒モデルの定年が1,139万円となり、前回調査から245万円下落している。
厚生労働広報
安全衛生教育及び研修の推進について(通達)
安全衛生教育推進要綱が改正された。技術革新の進展、就業形態の多様化、第三次産業の就労者数の増加等に伴う労働災害の増加等に対応する。新たなストレスチェック制度や化学物質のリスクアセスメントの実施等も踏まえた。本欄では、推進通達である平成28年10月12日基発1012第1号「安全衛生教育及び研修の推進について」、建災防宛第2号通達と「新旧対象表」を掲載。新要綱では、定期教育や能力向上教育の対象者に、事業場内産業保健スタッフや化学物質管理者などを加えた。また、経営側の対象者を、従来の管理監督者から管理職に表記を改めた。パート等には雇入時教育を徹底するほか、高齢者への教育では、反復学習の機会を与えることが望ましいとしている。本通達をもって昭和59年2月16日付基発第76号は廃止される。
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