労経ファイル 2016年8月1日 第631号
巻頭資料
厚労省「当面のメンタルヘルス対策の推進・過重労働防止のための総合対策」(通達)
ストレスチェック制度の施行を受けて、厚生労働省は、都道府県労働局長宛てに「ストレスチェック制度の施行を踏まえた当面のメンタルヘルス対策の推進について」を通達した。当面は、ストレスチェック制度の履行確保をメンタルヘルス対策の最重点課題と位置づけ、制度の周知を進め、実施方法、実施の有無等の確認・指導を行うとした。さらに、関連通達として「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」を改定しており、本欄後半に新旧対照表を掲載した。長時間労働者を対象とした面接指導だけでなく、ストレスチェック制度を活用して高ストレス者への面接指導を実施し、過重労働による健康障害防止対策に取り組むことを求めている。
研究報告
厚労省「マタハラ防止対策への省令・告示・指針案要綱を諮問」
厚生労働省が、妊娠・出産・育児休業の取得などに関するハラスメント(マタニティハラスメント=マタハラ)の防止策等を定めた省令・告示・指針案要綱を労働政策審議会に諮問した。均等法11条と育介法25条に規定され、対象となる具体的な言動の内容等についてまとめている。新たな法律は、上司や同僚による不利益取り扱いにつながる言動や継続的嫌がらせなどを問題にしており、これらを防止するため、事業主による対処方針の明確化と周知・啓発、苦情・相談を受け付ける窓口の設置を求めている。相談体制については、セクハラとの一体的な相談体制の整備について規定することとされた。懲戒規定を定め、適用について広報することも求めた。なお、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、職場における育児休業等に関するハラスメントには該当しないとした。来年1月1日施行。
行政資料
厚生労働省「平成27年度個別労働紛争解決制度施行状況」
都道府県労働局や労基署などに設けた総合労働相談コーナー(381か所)で、平成27年度に取り扱った状況を厚生労働省がまとめた。相談件数は減少傾向にありながら、100万件台をキープしており、27年度は103.5万件で0.2%増加し、8年連続の100万件台となった。このうち、民事上の個別労働紛争が24.5万件に増加。紛争の内容では、「いじめ・嫌がらせ」が6.7万件を記録し4年連続でトップに。本欄では、労働局長の助言・指導を申し出て解決した4事例と、紛争調整委員会によるあっせんで金銭解、決をみた4事例を紹介する。なお、助言・指導申出は前年度比5.8%減の8925件、あっせん申請は同4.7%減の4775件だった。
行政資料
厚労省「平成27年度過労死等の労災補償状況」
精神障害に関する労災補償の請求件数は毎年増加しており、平成27年度は1515件で前年度比59件増加した。業務上認定された支給決定件数は472件で、過去最多を記録した昨年から25件の減に。業種別では、製造業、卸売業,小売業で多発しており、具体的な出来事別では、「仕事内容・仕事量の変化を生じさせる出来事」75件が最多で、「嫌がらせ、いじめ」60件が続く。脳・心臓疾患関係も、3年連続減少していた請求件数が795件で32件増と増加に転じた一方、支給決定件数は251件と26件減少。1カ月80時間以上の時間外労働が支給決定件数の95%を占めるほか、3分の1強が輸送・機械運転従事者の自動車運転者である状況も変わらない。
厚生労働広報
職業紹介事業などの適正化に関する指針の一部改正
厚生労働省は、職業紹介事業などの適正化に関する指針(平成11年労働省告示第141号)の一部を改正した。再就職支援を行う職業紹介事業者が、労働者の自由な意思決定を妨げる形で退職勧奨(退職コンサルティング)してはならないことを「責務」として明記した。近年、一部の職業紹介事業者が企業に対して実施する再就職支援の過程で、労働者への退職強要と疑われる行為がなされているとして、国会審議で問題となっていた。同行為が判明した場合、労働移動支援助成金の支給対象外とする。本欄では、同助成金の見直しについても概略を掲載した。平成28年8月1日から、民間人材ビジネス会社が労働者を「良質な雇用」に再就職させた場合(「無期雇用・フルタイム」で、かつ「賃金が移動前の80%以上)、企業への助成率を5%優遇する。
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