【国土を脅かす地震と噴火】2 阪神・淡路大震災 建物被害を分けた81基準/伊藤 和明

2018.01.22 【労働新聞】
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パワーと恐ろしさを刻み付けた
イラスト 吉川 泰生

 6434人の犠牲者を出した阪神・淡路大震災から23年になる。地震の名称は「兵庫県南部地震」で、規模はM7.3、1995年1月17日午前5時46分に発生した内陸直下地震であった。

 この地震により、多くの木造家屋や鉄筋コンクリート造りのビルが倒壊し、広域火災も発生した。高速道路が横転し、新幹線などの鉄道線路が崩壊するとともに、大規模な液状化被害も生じた。住家の全壊は約10万5000戸を数えるなど、近来まれにみる大震災の様相を呈したのである。

 地震の後、気象庁は、淡路島の一部から神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市にかけて、震度7の地域があったと発表した。7という震度階は、48年福井地震を契機にして、家屋の全壊率が30%を超えた場合に適用することになっていたが、以後、震度7を記録する地震は発生していなかった。したがって、阪神・淡路大震災で初めて震度7が適用されたことになる。

 兵庫県南部地震は、複数の活断層が活動して起こした内陸直下地震であった。淡路島の北部には、地表に地盤の食い違い、つまり地震断層が出現した。右横ずれ断層で、最大変位量は、北淡町の平林において、横ずれ170センチ、縦ずれ140センチだったことを記憶している。

 このような地震断層が地表に現れる地震は、震源が浅い。ゆえに、地表は激甚な揺れに見舞われることになる。

 一方、本州側では、地震断層と認められる地盤の食い違いはみられなかったものの、余震分布などから、明らかに六甲断層系の複数の活断層が活動して地震を発生させたことが判明している。神戸、芦屋、西宮などの大都市の背後には、六甲山地が迫っている。

 地形をみれば、六甲山地とこれら大都市を乗せる平野との間は、ほぼ一直線であることが分かる。それは、六甲断層系の活断層の、太古からの活動の累積によって形成された地形なのである。まさにこれら大都市は、第1級の活断層の真上に発達してきたということができる。その活断層が活動して、壊滅的な災害をもたらしたのである。

 阪神・淡路大震災では、81年に建築基準法が改正され、新耐震基準となる前に造られた「既存不適格」の建物に甚大な被害が集中した。このことが契機となって、全国の既存不適格の建物について、耐震診断と補強を進めることが重要課題となった。

 現在多くの自治体が、既存不適格の木造家屋を対象にして、耐震診断なら無料、補強するに当たっても一定額を補助しようとする制度を立ち上げている。しかし、対象となる木造家屋の耐震化は、決して十分とはいえないのが現状である。

 阪神・淡路大震災の事例からも明らかなように、多くの人命を奪うのは家屋などの倒壊であることから、建築物の耐震化は、防災まちづくりの一環と捉えなければならない。現実に中央防災会議では、「今後の地震防災の最重要課題は、建築物の耐震化である」とうたっていることを付記しておきたい。

筆者:NPO法人防災情報機構 会長 元NHK解説委員 伊藤 和明

この連載を見る:
平成30年1月22日第3145号7面 掲載

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