【日本に馴染む職務型人事賃金制度】第1回 いま求められる理由・背景とは(上) 年功への危機感募る 新たな挑戦阻む要因に/柴田 彰

2020.01.09 【労働新聞】
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第3次ブーム暫く続く

 ここ数年、日本企業では職務型人事賃金制度(以下、職務型制度と略す)の導入が流行となっている。より正確にいえば、日本は職務型制度導入の第3次ブームを迎えている。そしてこの勢いは一過性のものではなく、しばらくの間は続きそうだ。

 過去を振り返ると、2000年前後に第1次のブームが起こった。この頃、景気の後退を受けて思うような業績を上げられなくなった日本企業が続出し、コストの抑制が大きな経営課題になっていた。かつては日本企業の強さを支えてきたと海外から賞賛を浴びた終身雇用、年功序列が足かせとなり、人件費が利益を圧迫する図式がそこかしこでみられるようになった。

 この時期、人事の世界だけではなく、世間的に「成果主義」という言葉が流行した。業績によって厳格に社員の処遇を決めていこうとする考え方のことを指している。

 成果主義を体現するものとして職務型制度が注目を集め、多くの日本企業がこぞって導入を争った。名目こそ成果と処遇との関係強化を謳ったものだが、その実は人件費の削減を目的として職務型制度を導入する企業がほとんどだった。日本の企業が、職務型制度が持っているコスト・コントロール効果を期待したのが第1次ブームだったのである。

 2010年代に入ると、日本は職務型制度の第2次ブームを迎える。このブームの背景には、日本企業のグローバル化があった。

 当然のことながら、同じ日本の企業であっても、グローバル化の進み度合いには相当なバラつきがある。2010年前後の時点で、海外での売上げ比率が全体の半分を占めるような企業もあれば、国内でしか事業を展開していない企業もあった。その度合いに差はあれど、当時、多くの日本企業が海外にこれからの成長の活路を求めようとする機運が高まっていた。そこで登場したのが、グローバル・グレードという仕組みである。

 グローバル・グレードを簡単にいえば、世界共通で職務等級を導入するものだ。詳細は後に譲るが、国を越えて統一の等級制度を構築しようとすると、職務型以外に選択肢はない。職能資格は日本独自の仕組みであるため、海外では受け入れられない。もしも、日本の本社と海外拠点との間で頻繁に人材の異動を行い、いわゆるグローバル人事を加速させようとすると、社員を格付ける統一の基準がないと極めて不都合である。

 その基準となるのが等級であり、海外では主流派を占める職務型の出番となる。日本だけでなく、グローバル全体で人材の最適配置を行っていきたいと願う日本企業が、グローバル・グレードを取り入れていった。こうした企業が第2次ブームの牽引役となったのである。

高齢化の抜本的対策に

 第1次・第2次ともにブームが過ぎ去った現在、導入には踏み切ったものの、職務型制度の定着に苦戦している企業が多いのが実態である。職務型制度は、日本の独特な労働市場や人事慣行とは根本的に相容れないものだからだ。多くの企業は制度の導入で力を使い果たしてしまい、導入後の定着に向けた努力や工夫を怠ってしまった。

 日本企業が職務型制度を正しい形で運用し、定着させるには…

筆者:コーン・フェリー・ジャパン㈱ シニアクライアントパートナー 柴田 彰

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令和2年1月13日第3240号13面 掲載

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