【事故防止 人の問題を考える】第60回 製造業の「墜落・転落」と「飛来・落下」② 

2019.04.25 【安全スタッフ】
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労働災害の原因となるヒューマンエラー

労働安全衛生総合研究所 安全研究領域長 高木 元也 氏

 前回紹介した墜落・転落災害、飛来・落下災害の原因には、ヒューマンエラーが大きく関わっています。

① 危険軽視

 簡単で危険を感じにくい作業では、危険軽視によるヒューマンエラーが起こりやすくなります。例えば、「すぐに終わるから、はしごは立てかけるだけで固定しなくてもいいや」「棚の上の荷物を取るのに、脚立の天板に乗って背伸びすればなんとか届くから大丈夫」のように、作業者が危険を軽視し不安全行動をとり、労働災害を引き起こす事例があまりに多く見受けられます。

 しかしながら、危険軽視の対策は難しいのが現状です。講じることができるものとして、リスクテイキング(危険を受け入れ行動)する作業者には、リスクを受け入れるメリット(例:早く作業が終わる)より、デメリット(例:被災する)が大きくなるように、その行動により重篤な災害が多発していることなどを教えることが必要です。

 また、作業者が不安全行動しないように監視することも効果的です。

 その他、決められたルールを守らせるため、事業場全体が「ルールは必ず守る」ことに真剣になる雰囲気づくりも大切です。それにより作業者の安全意識を高め、たとえ危険を軽視する気持ちになったとしても、それが不安全行動につながらないようにもっていきます。このような事業場全体の雰囲気づくりには、現場の長のリーダーシップが特に重要です。

② 不注意

 現場では不注意というヒューマンエラーがもたらす墜落・転落災害も数多く見受けられます。ただ、人間はひとつのことに集中すると他のことには不注意になるなど、注意力には限界があります。不注意対策には、作業者が作業に集中し、足元が不注意になったとしても墜落・転落しないような安全設備面の対策が必要になります。

人間の本能に起因する不安全行動

③ 近道・省略行動

 面倒な手順は省略したいなど、近道・省略行動にも気をつけなければなりません。

 脚立をこまめに移動させることが面倒で、脚立から身を乗り出して作業を行い、バランスを崩して墜落する災害が多発しています。対策には、作業者の安全意識を高め不安全行動の防止に努めることは必要ですが、近道・省略行動は人間の本能に起因するものであり、それだけでは限界があります。作業者に「面倒な作業だな」という気持ちにさせない対策が必要です。脚立を頻繁に移動させなければならない作業では、脚立を使わないことです。

④ 場面行動

 突然、反射的に行動してしまう場面行動も墜落災害に関わってきます。

 例えば、脚立上で、棚の上のダンボールを両手に抱えたとき、バランスを崩し転落しそうになった瞬間、手に持つダンボールを放り投げて飛び降りれば、重篤な災害にはつながりにくいです。しかし、その瞬間、反射的にダンボールを落とすまいという体勢をとってしまい後頭部から墜落した重篤な災害が数多く発生しています。

 はしごについても、作業者がはしごを登っているとき、腰に下げた道具袋の中から工具が落ちそうになった瞬間、作業者は「落とすまい」と、反射的に工具を右手でつかみにいき、右手に集中するがあまり、はしごをつかんでいた左手を外して墜落してしまった死亡災害も発生しています。このような場面行動による信じられない墜落災害が実際に起こっています。

 作業者が反射的に行動しても墜落を免れる対策を講じることが求められます。

⑤ 高年齢者の加齢に伴う心身機能低下

 加齢に伴い低下する心身機能にはさまざまなものがありますが、墜落・転落災害、飛来・落下災害に特に関わりの深いものには、次のようなものが挙げられます。

 ◎バランス感覚(心身平衡機能、姿勢のバランス保持)の低下⇒高年齢者の声「脚立上でふらつく」

 ◎とっさの動き(反応動作、その正確さと早さ)の衰え⇒高年齢者の声「落下物、転倒物から逃げられない」

 ◎低照度下視力の著しい低下(暗い所での視力低下)⇒高年齢者の声「薄暗い中、作業台を踏み外しそうになった」

 ◎握力の低下⇒高年齢者の声「ハンマーがすっぽ抜ける」

脚立はリスクが低そうに見えるが…

 墜落・転落災害、飛来・落下災害の再発防止対策を具体的にみていきます。

① 墜落・転落災害

 製造業の墜落・転落災害をみてみると、「脚立」「はしご」「トラック」「階段」「建築物・構築物」など、一見、それほどリスクが高くなさそうに思われるところでのものが多く見受けられます。

 しかし、建築工事では、平成29年に脚立上作業での墜落・転落災害で実に5人も亡くなっています。はしごにおいても、はしご上での作業、はしご昇降時の死亡者数が2人も発生しています。このように、脚立やはしごの上での作業などは、死亡災害が多発して非常に危険なのです。

 厚生労働省は、このことを重要視し、脚立、はしごに起因する労働災害防止のパンフレットでは、「使用自体を避けられないですか?」と問いかけるようになりました(参考)。

<参考> はしごや脚立を使う前に検討するポイント(厚労省パンフレットより)
 以下の2点について検討してみましょう
□ はしごや脚立の使用自体を避けられないですか?
□ 墜落の危険性が相対的に低いローリングタワー(移動式足場)、可搬式作業台、手すり付き脚立、高所作業車などに変更できないですか?

2019年5月1日第2329号 掲載

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