【事故防止 人の問題を考える】第33回 クレーン転倒事故とヒューマンエラー(前編)

2018.01.26 【安全スタッフ】
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どうしてクレーンは倒れたのか

労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター センター長 高木 元也 氏

 数年前、NHKで「何故起きるクレーン事故」の特集が組まれ、そこに解説者として出演する機会がありました。当時、クレーン作業による転倒事故が相次ぎ、世間の関心が高まり、社会問題の一つとして番組で取り上げられました。

 番組制作者は、事前打ち合わせで、どうしてあのような巨大なものが頻繁に倒れるのか大きな疑問を抱いていました。

 「早く仕事を終わらせよう」と無理をし、過負荷防止装置という安全制御装置をオフにし、定格荷重以上のものをつろうとしてクレーンの転倒を招いた。当時の不況の影響がそれに拍車をかけている、などといくら説明しても、彼らはそれがあの巨大な機械を倒す理由なのかと首をかしげていたのが印象に残っています。

 クレーンは一旦バランスを崩しブームが傾き始めると、もうどうすることもできません。巨大なクレーンが倒れ、周辺の家屋、自動車などを押しつぶし、時に死亡災害を引き起こします。

 それが、ちょっとした人の不安全な行動によるなんて信じられないのが、一般の人の感覚です。産業界は大事故を起こさせないとする姿勢が足りないのではないかとまで言われてしまいます。

 筆者もクレーンの転倒を目の当たりにしたことがあります。ゼネコンに勤務していた30年程前、シンガポールで地下鉄工事に携わっていました。地下鉄といっても5.3kmの工区はすべて高架橋でした。そこで、45tクローラークレーンの転倒事故が起きました。転倒場所はマリンクレーという軟弱地盤の上に、盛土とその上に砕石を敷き均した仮設道路上でした。クローラークレーンは道路端の地盤沈下が主因でバランスを崩しました。一旦バランスを崩しブームが傾くともうどうすることもできません。ブームはゆっくりと倒れていきました。何もできない。ただ、倒れるのをみているだけです。そして、次の瞬間、地上に激突。ものすごい激突音。そして地響き。倒れたブームは事務所を直撃しました。プレハブの事務所は一瞬のうちにつぶされました。クレーンのフックは駐車場に停めてあった車に直撃。その車は大破しました。ただ、不幸中の幸い、事務所の中で働いていた人は奇跡的に誰も被災しませんでした。

 その後、国内の発電所工事を担当していた時もクレーンの転倒事故に遭遇しました。冷却用の海水を取り入れる取水槽工事でした。そこで、隣の工区の建屋建築工事で設置された100t級のクレーンが、おそらくブームを立てすぎたため転倒しました。そのブームは自分たちの工区、取水槽脇で門型クレーンの基礎工事をしていたところに向かって、ゆっくり倒れてきました。

 そこで作業をしていた人は、急いで法長3m程の法面を駆け上がり逃げようとしましたが、どれだけ逃げても自分の方に向かってクレーンが倒れてくるようだったと、当時、恐怖談を語っていたのを今でも鮮明に覚えています。

 これまで、移動式クレーンなどの転倒事故は何度テレビニュースで取り上げられてきたことでしょうか。クレーン転倒事故に対する世間の関心は高いものがあります。

 では、どのようにすればクレーン転倒事故を防ぐことができるのでしょうか。

 今回はこのことをテーマに、移動式クレーン転倒事故の実態を把握しつつ、その背景を探り、クレーンオペレーターなどのヒューマンエラーによる転倒事故の防止対策について考えていきます。

この連載を見る:
平成30年2月1日第2299号 掲載

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