【人事学望見】第1284回 個別同意ない出向 整理解雇的な退職勧奨とみなす
2021.04.08
【労働新聞】
出向は配転と同じく職場異動だが、両者で被る不利益の度合いは、天と地の差があるといって良い。出向を命じるには労働者の承諾が必要で、労働条件その他も就業規則等で整備されているのが基本的条件だが、抜け道を探る例は後を絶たない。
条件自体に問題はないが
退職勧奨を拒否した者に対し子会社への出向を命じて権利濫用を問われたものにリコー出向事件(東京地判平25・11・12)がある。
事件のあらまし
Y社は、各部門6%の割合で余剰人員を選定し、該当社員に対し希望退職への応募を勧奨した。このうち、9割近くが応募したが、Y社は応募しなかった者(約150人)に対して子会社への出向を命じた。権利の濫用であると訴えたAらへの出向命令は、技術系の業務から立ち仕事や単純作業が中心となる物流現場への異動という過酷なものだった。ただ、出向に際して、人事上の職位、賃金額の変更はなく、就業の場所も自宅から通勤圏内にあった。
Aらは、本件出向命令は無効であるとして、Yに対し、①出向先において勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認、②労働契約上の信義誠実義務違反および不法行為に基づく損害賠償請求として各220万円と遅延損害金の支払い、③退職強要行為、退職に追い込むような精神的圧迫の差止めを求めて提訴した。…
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令和3年4月19日第3301号12面 掲載